天王寺動物園「なきごえ」WEB版

なきごえ 2018年11月号 Vol.54-04

生き物好きが増えてくれれば…

薮内正幸美術館 館長 藪内 竜太さん

 

 我が家は動物だらけの家だったので(ただし生体ではなく2次元ですが)、物心ついた時には生き物好きだったと思います。やはり幼少時の環境というのは大きいのでしょうかね。

 ところで、私は個人的に生き物好きの人が一人でも増えればな、と思っています。実は現代の諸問題の多くは、生き物好きが増えれば良い方向に行向くのではないかと。例えば環境問題、今でこそ温暖化などについて新聞やTVで見聞きするようになりましたが、生き物好きなら昔から気になる問題ですよね。毎年来ていた渡り鳥を最近は見なくなったなぁ、とか。そして産地偽装など食にまつわる問題だって、生き物好きからすれば「この時期にその食材はオカシイだろ?」って疑問が出ます。さらに凶悪な少年犯罪が起こるたびに「命の大切さを教えなければ…」なんて話が出てきますが、イヌやネコを飼っているお子さんは命や死についてわかっているでしょう。生き物の世話をするということは相手のことを理解していなければならないし、飼い犬と接している時は言葉は通じないけれど意思の疎通があるのは、相手の立場に立って物事を考えているわけです。今の大人、相手のことを考えられない人は多いですよね。ですから、環境のことも命の重さも理解し、相手をおもんばかることのできる人が増えるということは、本当の意味での「美しい国」になるのかなと思います。でも、大人になってから生き物好きになれといっても難しい。そこで家庭環境です。日頃から生き物の話題が満ちている環境にいるお子さんはきっと生き物好きになるでしょう。

 え?ウチの子どもたちですか?私の職業上、動物だらけの環境ですので(やはり生体ではなく2次元ですが)もちろん生き物好きです。小さい頃は「イヌ飼いたい、ヘビ飼いたい」ってよくいっていました。でもその都度妻がいっていました。「何も飼わなくても、サルもシカもイノシシもその辺りにいるじゃない」。…ま、確かに。

(やぶうち りゅうた)

 

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