動物園では通常ご家庭などで飼育することができない動物たちが数多く暮らしています。野生での生息環境とは全く違う状態で暮らしている動物たち。ペットでも愛玩動物でも伴侶動物でも家畜でもない動物たち。野生動物でもない動物園動物たち。そんな動物たちの健康管理をしながら、少しでも幸せに暮らしてもらえるように飼育担当者や獣医師が日々仕事をしています。
今回はコアラについてのお話しの第2弾です。第1弾(2017年4月号:)ではアーク父ちゃんの子どものそらくんがコアラなのに太いユーカリの木に細めのユーカリに登っても樹上での休み方がわからなかったお話しでした。
さて、そのそらくんがユーカリの木に登るたびにだんだんコアラになってきましたよ。初めて外に出てから2週間後にはすっかりコアラになって高いユーカリの樹上でのんびりと過ごすことができるようになりました。そして風に揺られても眠ることができたり、パクパクとユーカリの葉っぱを食べたりするようになりました。5月10日には木の股のところまで降りずに幹から幹へ移動できるようになりました。
初めて外に出て陽射しを浴びた日のそら。ユーカリを持って行くとパクパクと食べました。
ユーカリの樹上での暮らしが良くなると部屋に帰りたくなくなるのですが、夜もずっと外のユーカリ林で過ごすともしかしてカラスに襲われたり野良猫に襲われたりするかもしれないので、夜は部屋に帰ってもらわないといけません。帰りたくないそらくんやアーク父ちゃんに部屋に帰ってもらうためには樹上までお迎えに行かないといけません。ユーカリの樹上から強引に降ろそうとするととてもストレスを与えてしまいます。大きなストレスがかかってしまうと部屋に戻ってもユーカリを食べなくなってしまいますので、時間をかけてちょっとずつ降りて来てもらいます。
部屋に帰ってからもバクバクとユーカリを食べてくれました。
コアラなのにコアラやなかったそらくんがだんだん本物のコアラになっていく姿を観てとても嬉しい気持ちになりました。とともに、止まり木にとまっているアーク父ちゃんやそらくんを観てもコアラにみえなくなってしまいました。本当にコアラがコアラになるために、生活する環境がいかに大切なことなのか思い知らされました。日本で生まれたコアラたちがみんなコアラになれるようになるにはコアラを飼育している動物園が協力し合っていくことがとても大事です。日本で暮らしているコアラがコアラの形をした別の動物の暮らしをするのではなく、本物のコアラらしく少しでも多くの時間をユーカリの樹上で過ごしてほしいと願っています。太陽の恵みを体いっぱいに浴びて、ユーカリの樹上で風を感じてほしいと願っています。
(西岡 真)
(編集部注)
この記事は2017年4月号に掲載した「コアラはコアラらしくプロジェクト?」の続編です。当時の記録を振り返って執筆されたものです。文中に登場するコアラのそらは2012年8月6日に淡路ファームパークイングランドの丘動物園で生まれ、2015年12月16日にブリーディングローンで同園に貸し出していた父親のアークと共に天王寺動物園にやってきました。その後2016年7月1日に香港オーシャンパークに貸し出しましたが、翌年の10月17日に同園で亡くなりました。
コアラはコアラらしくプロジェクトジェクト?
WEB版なきごえ「2017年4月号」もご覧ください。