私の新しい宝もの 天王寺動物園


551蓬莱 取締役常務 山田 格さん

 子どもの頃、夏休みになると通天閣の下で町医者を開業していた祖父を訪ねるのが習慣でした。当時、祖父も父も天王寺動物園の方々には懇意にして頂いており、祖父宅からゆっくり歩いても10分もかからない通用門から、事務所に「おじゃまします!」などと声をかけて、園内にお邪魔しました。キンカジュー、センザンコウ、コアリクイなどが印象に残っています。撮影のために、獣舎近くの常緑樹にコアリクイを登らせて頂いたり、シャッター音でビクっと萎縮してしまうセンザンコウをなだめさせてもらったりといろいろな思い出があります。また、チンパンジー舎の寝室側で、格子の前をいったりきたり走っていると、ニョキっと腕を突き出したチンパンジーに通せんぼうされて仰天したこともあります。「チョロチョロうるさいぞ!」といわんばかりでした。万国博の機会に、キーウィが入ったことも印象的な出来事でした。おそらく天王寺動物園に最後にお邪魔したのは、中国から黒いオオカミが入ってしばらくたった頃だったように思います。

 東京から関西線の急行「大和」で終着の湊町駅まで行くのが大好きでした。通天閣を背景に恐竜が見えるのです。祖父の家から見上げる灯りの点いた通天閣は、夜空にそびえる「ゴジラ」のように見えて恐ろしかったのですが、かって、園内にあったコンクリート製のとびきり大きな恐竜たちが朝の明るい光の中で闘っている様を見下ろす通天閣はお気に入りの光景でした。この景色は、今は姿を消した霞町の市電の車庫や、阪堺電車の往来、あやしげにざわざわした新世界の雰囲気、それと対照的な天王寺公園のたたずまいなどとともに、筆者の「大阪」イメージの核をなすものです。

 今日、動物園について様々な批判もありますが、今後も動物たちの多様性に都市の市民が様々な面から接する機会を提供していただくことは重要なことと思います。もちろん、これまでにもまして、まずは動物たちの生活環境をよりよくする努力は継続して頂き、いつまでもヒトと動物たちのふれあいの場として新鮮な驚きや感動を与え続けてください。

 

(やまだ ただす)


 

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