草食動物 〜植物を栄養にするために〜
動物専門員は動物たちの様子から、飼料内容の変更を提案することもあります。今回は草食動物のおなか事情についてお話します。
草食動物とは、主に植物を食べて暮らす動物たちの総称です。そんな草食動物たちには、切っても切れない相手がいます。それは、おなかの中にいる微生物たちです。ほとんどの動物は、自分の消化酵素で植物の構成成分である食物繊維(セルロース)を分解することができません。
そのため、植物だけを栄養源にする草食動物は、食物繊維を分解できる微生物をたくさん消化管内に共生させ、その微生物たちの力を借りて、効率よく消化を行っています。草食動物は、微生物の住む部屋をそれぞれおなかの中に持っています。例えば、反芻(はんすう)をするウシの仲間であれば、4つあるうちの1つ目の胃“第一胃”、ウマやウサギの仲間であれば、“大腸(盲腸や結腸など)”がその部屋にあたります。部屋が最も大きいのが、反芻(はんすう)をするウシの仲間です。「反芻(はんすう)」とは、植物をかんですりつぶして→飲み込んで→口に戻して→またかんで。。。と繰り返すことをいいます。ウシの仲間たちは何度も微生物部屋に食物を運び、かみつぶして細かくなった食物と微生物が繰り返し出合う仕組みを作っています。この仕組みのおかげで、食べた草のうち30〜50%程度しか栄養分を利用できないウマの仲間と違い、ウシの仲間は、食べた草から50%以上の栄養分を利用できることが知られています。植物を食べることに特化した動物たちの生存戦略ですね。
(棚田 麻美)
消化管模式図
オオカミの介護
チュウゴクオオカミのチュンサンが今年の1月14日に老衰で亡くなりました。18歳でした。今回はそのチュンサンの介護生活についての話をしたいと思います。
チュンサンは高齢になったため、オオカミ舎のバックヤードで隠居生活をしていました。寝室の使い方を工夫したり、ミストを設置したりと、チュンサンが少しでも過ごしやすい環境で生活が送れるようにしていました。チュンサンも隠居生活を満喫してくれていましたが、昨年の秋頃から足腰の衰えが見られるようになり、グラウンドから寝室に戻れなくなることも起きました。しかし寝室にずっと居ることは避けたいという気持ちはありました。動ける間はチュンサン自身で外に出て運動して欲しかったので、寝室との出入り口に滑り止めマットを設置しました。それによりチュンサンも出入りしやすくなり毎日グラウンドに出て日向ぼっこをしたりしてくれました。
12月下旬になって、後ろ脚が立てない状態になり、寝室内で生活をすることになりました。幸いなことに食欲はあり、手であげるミンチの餌も多く食べてくれました。その後、細かな温度調整ができスペースも広い動物病院に移動してもらうことにしました。移動してからのチュンサンは当初は慣れない環境に戸惑いもあったと思いますが、すぐに病院での生活にも慣れてくれたので、自立の補助や寝返りなども嫌がらずにすんなりとさせてくれました。立てない状態は続きましたが、食欲もありチュンサンらしく最期までスタッフ達と共に過ごしてくれました。沢山の経験をさせてくれたチュンサンには感謝しかありません。
(大城 賢次)
床暖房の上でくつろぐチュンサン