今回の話題は、「獣医室から」のタイトルが示す“動物の診療”の話題からは少し外れていますが、昨年の10月に開催された「世界動物園水族館協会定例会議」について報告させていただきます。天王寺動物園は、World Association of Zoos and Aquariums(WAZA:世界動物園水族館協会)という団体に加盟しています。WAZAは世界中の動物の保護や福祉の向上、自然を守るための環境教育と地球規模の野生動物の保全を行なう動物園、水族館やそれらの施設の運営団体をサポートすることを目的として設立され、現在北米やヨーロッパの園館等を中心に約280施設の園館等が加盟しており、加盟園館の年間の総入園者数は7億人以上との報告があります。日本国内では当園以外に、日本動物園水族館協会、千葉市動物公園、東京都恩賜上野動物園、東京都多摩動物公園、横浜市緑の協会、名古屋市東山動物園、ふくしま海洋科学館が加盟しています。
今年の会議は10月9日から13日までの日程で、メキシコにあるプエブラという都市で開催され、当園からは私と牧園長が参加しました。今回の会議には約160施設165名の参加があり、会議の1日目は午後から今回の会議のホスト動物園であるAfrican Safariの視察がありました。この動物園は敷地面積が約300ha(当園の約27倍)もある広大な動物園で、約300種5,000点もの動物を飼育しています。園内はサファリ形式のエリアとウォーキングエリアに分かれており、視察の際に自分の希望する動物(ゾウ)のバックヤードと飼育管理についてのレクチャーを受けることができました。特にこの動物園が実施している間接飼育でのゾウの体調管理については、毎朝寝室から放飼場に出すときにスクイーズケージを通過して身体の状態をチェックしており、このトレーニング方法を他の動物園の飼育員にも教えて健康管理のスキルアップを図っているとのことでした。
2日目以降は毎日ホテルに8時半から17時まで缶詰め状態で、会議が終了すると参加者の親交を深めるための小宴が催され、毎晩解放されるのは23時を過ぎてからというハードスケジュールな5日間でしたが、海外の動物園などのスタッフと知り合えたり、今後海外から新たな動物を導入するための情報収集や事前打合せなども行うことができました。会議の内容は、動物園における野生動物の保全に関する取り組み内容の発表や、伝えることが難しいといわれている生物多様性についてどのように入園者に理解してもらい、啓発していくかという点について積極的な意見交換がされました。最後に、2020年までWAZAが取り組んでいる生物多様性(Biodiversity)の周知と啓発のために作成した、ゲーム感覚で生物多様性を学べるアプリのQRコードを添付しておきますので、みなさんもぜひ一度トライして生物多様性への理解を深めてみてください。
African Safariの角が立派なクロサイ
WAZA会議の看の板前で
(今西 隆和)