【獣医室から】新しい動物がやってきたら。


 天王寺動物園で暮らす動物たち。ここで生まれ育った動物もいますが、他の所から引っ越してきた動物もたくさんいます。新しくきた動物たちがデビューする前に通らなければならない関門、それが「検疫」です。

 新しくやってきた動物が病気をもっていたら、以前からいる動物たちにうつしてしまいます。中には人間もかかる可能性がある病気もあり、入園者の皆さんまで迷惑がかかります。病原体の種類によっては、環境中にひそんで何年も生き残るものもあり、広い運動場などに入り込んでしまったら完全に追い出すことは困難です。そこで「検疫」を行い、病気を持っていないかを確認し、万一持っていた場合はデビュー前に治療する必要があるのです。

 やってくる動物の出身地はさまざまです。外国の場合、動物の種類と出身地によっては空港などの検疫所で法律に定められた条件の検疫を行う場合もあります。日本にはないエボラ出血熱などの「重大な人間の病気」や、口蹄疫(こうていえき)など「畜産に打撃をあたえる動物の病気」を防ぐためです。動物によってはこの条件が非常に厳しく、日本への輸入が事実上困難なこともあります。そうでない動物でも、多くの項目について健康証明書がなければ入国できず、それを出身地に発行してもらう手続き(主に英語でのやりとり)はとても大変です。

 動物園に着いたら他の動物と接触させず、掃除や消毒がしやすい場所に収容します。異常があればすぐに発見できるよう、「観察しやすい」ことも重要です。また動物にとって、長時間運ばれ、知らない場所に来るというのは大きな負担です。健康だったとしても体調を崩すかもしれません。そして、他の動物園からの場合は30日間、業者からの購入や野生由来など、動物園以外からの場合は60日間検疫し、新しい環境や餌に慣れてもらいつつ、必要な検査と治療を行います。動物園以外からの方が期間が長いのは、元々どのような環境で飼育されていたのかがわからないからです。検査方法のない病原体もあるので、時間をかけて異常がないかを観察する必要があるのです。

 すべての検査をクリアし、検疫期間を満了すると晴れてデビューとなるのですが、時には何度治療しても検査で引っかかってしまい、何カ月もデビューできないこともあります。大概、当該動物は元気なのですが、高齢動物や他の病気で弱っているときなど、体力のない動物にうつると命にかかわるので放ってはおけません。

 「動物のお披露目」は華やかですが、飼育係や獣医師にとってはいろんな意味で「ホッとする」瞬間なのです。

 

フサオマキザルを検疫中のケージ

フサオマキザルを検疫中のケージ

検疫中のコビトマングース

検疫中のコビトマングース


(恒川 優子)

 

 

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