動物園では通常家庭などで飼育することができない動物たちが数多く暮らしています。野生での生息環境とは全く違う状態で暮らしている動物たち。ペットでも愛玩動物でも伴侶動物でも家畜でもない動物たち。野生動物でもない動物園の動物たち。その動物たちの健康管理をして、少しでも幸せに暮らしてもらえるように飼育担当者や獣医師が日々仕事をしています。
今回はコアラについてお話しをしてみたいと思います。
天王寺動物園では現在1頭のコアラが暮らしています。10歳の雄のコアラで名前をアークといいます。一時期ブリーディングローンのため淡路ファームパークイングランドの丘動物園で暮らしていましたが、2015年12月16日に息子のそらと一緒に天王寺動物園に帰ってきました。息子と一緒に過ごしていたのでアーク父ちゃんと呼んでいて、そらが香港オーシャンパークに引っ越していった後もアーク父ちゃんと呼んでいます。アーク父ちゃんはオーストラリアのメルボルン動物園で生まれて1歳半で天王寺動物園に来てくれました。お母さんとメルボルンで過ごしている時に高い木にも登っていたのか、とても木登りが上手で、少々の風が吹いてもどこ吹く風でユーカリの樹上で過ごすことができるのですが、息子のそらは全く違ったのです。
まず初日扉を開けて地面に降ろすとそらは一番近い枯れ木に登って一日そこで過ごしました。2日目に太いユーカリの幹につかまらせてみました。自分ですいすいっと登っていくと思っていたのですが、なんと登ることができず固まってしまい地面に下りてきてしまいました。屋内展示に使っている止まり木の太さと同じくらいのユーカリの幹に連れて行くと、すいすいと上まで登っていきました。でも自然のユーカリの樹上でどうすればいいのかわからずに横枝に座ることも出来ないまま下に下りてきて太い股のところでずっと休んでいました…
コアラなのにコアラやないやん!人工哺育やないのに、コアラの母親が育てたコアラやのに…愕然(がくぜん)としました。それぞれの動物たちがその動物そのものになるのに環境がいかに大切なものなのか思い知らされました。それとともに、日本で生まれたコアラたちはコアラの形をした別の動物たちなんだと。
コアラはコアラらしく少しでも多くの時間をユーカリの樹上で過ごして欲しい。太陽の恵みをあげたい。風を感じて欲しい。コアラはコアラらしくプロジェクト?を始めて本当にそらやアーク父ちゃんからいろんなことを教えてもらいました。かわいい〜だけじゃないコアラの素敵な姿を観て頂き、コアラのことを知って頂きたいと願っています。
ユーカリの樹上で過ごしているアーク父ちゃん
ジャ〜ンプ一番、隣りの幹に跳び移るアーク父ちゃん
(西岡 真)