天王寺動物園の約15倍。そんな広大な敷地面積をもつ動物園が台湾北部にあります。2月中旬、獣医師1名、飼育担当2名で「台北市立動物園(以下台北動物園)」へ視察研修に行ってきました。天王寺動物園開園100周年の1年前、2014年に同じく開園100周年を迎えている歴史ある動物園です。
案内してもらった中でも印象的だったのは、台湾国内に生息している動物の保護、調査研究に力をいれているところ。様々な動物に対してトレーニングを行い日々の健康管理から取り組んでいるところ。
ジャイアントパンダのトレーニング、獣医師、
キュレーター、キーパーが協力して行います。
約400人ものボランティアに協力してもらいながら様々な教育活動を行っているところなどでした。
台北動物園で力を入れている動物の1つがセンザンコウです。全身ウロコでおおわれている。アリを食べる。20㎝ほどの長い舌をもつ。このような不思議な特徴をもった生き物が、実はもっとも多く違法取引をされている動物なのです。密輸されている頭数は、ゾウやサイの約10倍にもなると聞き驚きました。肉は食用、皮は靴やバッグの材料、ウロコや血は薬の原料などと様々な用途で利用されています。このため野生個体の生息数は激減し、昨年、ワシントン条約の附属書Ⅰ(絶滅のおそれのある動物)に指定されてしまいました。台北動物園の近隣にも生息しているこの種を護るべく、動物園は多くの活動を行っています。野外調査を行ったり、餌であるアリを野外でつかまえてきて栄養成分の分析を行い飼育下での餌の栄養価を調整したり、自動車事故などによる負傷個体や密輸個体を引き取り、ケアした後野生に戻せるものは戻したり、数年前には、母乳を自力で飲むことができなかった子どもの人工哺育を世界で初めて行いました。その一方で、動物園を訪れたお客様に、現状を知っていただくためのガイドもしています。
世界最高齢(19歳)まで生存したセンザンコウの剥製、
ウロコにさわることができます。
園内はリニューアル真っ最中で、ここ数年で完成した新しい施設や、来年完成予定の施設もいくつかあり、見どころ満載です。敷地が広いので、大きな群れで飼育されている動物もたくさんおり、群れの中の個体同士のかかわりに注目して見てみるのもとてもおもしろいと思います。
街中には英語が通じるお店も多く、中にはカタコトの日本語を話せる人もいます。おいしい食べ物、不思議な食べ物もたくさんあります。飛行機で関西国際空港から3時間前後で行くことのできる、沖縄より少し南にある島『台湾』に、ぜひ行ってみませんか。
(中島 野恵)