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獣医室からということで、意外といわれてみないとわからない話から始めることにしましょう。獣医師は、人間でいうところの内科、外科はもちろんのこと、歯科、薬局を兼ねた仕事をしています。すべての動物の不調に対応しなければならないのです。
さて、題名のペンギンの話に入りましょう。ある日、ペンギンが跛行(はこう)しているのが目に入りました。左足が痛いのか、ペタペタと歩くリズムのバランスが悪いのです。個体情報をもとに飼育員と相談し、早速捕獲、診察となりました。足の裏にはウオノメのようなものができかけており、趾瘤症(しりゅうしょう)と診断しました。加えて血液検査をしてみると、尿酸値も高くなっていました。蛋白質の代謝で発生する有害なアンモニアを、人間は無毒な尿素に変えて尿として排泄(はいせつ)しますが、鳥類は固体の尿酸に変えて、糞(ふん)と一緒に排泄(はいせつ)します。その尿酸の生成が多くなりすぎたり、排泄(はいせつ)が少なくなったりすると血液中の尿酸が多くなり、その結晶が臓器や関節に現れ不調がでてきます。
人間と仕組みは全く一緒というわけではありませんが、プリン体の多いビールを飲まなくても?“痛風”になってしまうのですね。人間をはじめチンパンジーなどの霊長類や鳥類では、尿酸を分解する酵素を持たないため、うまく体外へ出すことができないと溜(たま)まってしまう運命になっているのです。 (図師 尚子)
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