公園花だより№75【茶臼山】


 天王寺公園内にある純日本式の池泉回遊式庭園・慶沢園は大正時代末期に住友家から大阪市に寄贈された古雅の趣を偲ばされるお庭です。そこで今回は職員はもとより天王寺花ボランティアクラブのみなさんの手助けによる花床づくりや株分け、育成管理ののちに優雅な立ち姿を見せる花菖蒲(しょうぶ)の魅力や特徴、その品種などを紹介することにしました。

花菖蒲の床

花菖蒲の床

 

  園芸種である花菖蒲(しょうぶ)はアヤメやカキツバタ同様、アヤメ科アヤメ属に分類され、5月の上旬頃にはアヤメが咲き始め、続いてカキツバタ、花菖蒲(しょうぶ)の順となり6月上旬から下旬あたりに見頃を迎えます。この花、大別すると江戸系に肥後系、伊勢系に分けられ、さらには長居古種系に雑種系とがあり、江戸系は江戸中期に改良され、花びらに隙間のある“三英咲き(外花被3枚)”が特徴です。またこの花は庭園や屋外での観賞を目的に改良が重ねられたため風雨や直射日光に強く、栽培は比較的容易に行えます。品種には揚羽・伊豆の海・五色の珠などがあげられ、肥後系は江戸時代の終わりごろ、肥後(現在の熊本県)から持ち込まれ、室内での観賞に向くように改良されており、背丈は低めで花は堂々とした大輪、花弁は豊かに重なり合う“六英咲き(外花被6枚)”で、当然はでありますが、花の大きさが災いし風には弱く、屋外の栽培には欠点が見られるものの、最近では庭植えにも耐えられるよう美しく咲く品種が作り出されていて、品種的には葦(あし)の浮船・桜ヶ丘・涼風などがあげられます。また、伊勢系では江戸時代の終わりごろ、伊勢の松阪地方を中心に改良が進められ、花弁はちりめん地に深く垂れ下がった“三英咲き”で、鉢植え用として作り出され、容姿は柔和で女性的。花の葉が同じ高さにそろっているのが良しとされ、これには朝日空・伊勢路の春・寒紅梅などがあげられます。いっぽう、長居古種系には山形県の長井市に保管されている一群がこれにあたり、江戸系よりも古い時代に育成された品種であり、高い草丈、花は小さく野性的。色彩は変化に富み、美しく清楚な立ち姿が特徴になっています。品種は出羽万里・長井小紫・山野辺などがあげられ、雑種系では自然界には存在しえない花たちで、バイオテクノロジーでの人の手によって作られているほか、キショウブやカキツバタなどの近縁種との交配により生み出された品種でこれには愛知の輝き、金冠、金星などがあげられます。

 慶沢園からはあののっぽのビル、アベノハルカスが木々の間から遠望でき、池には水鳥たいちがたわむれ、上記した花菖蒲(しょうぶ)は当然、四季折々の花たちが待ち受けます。天王寺動物園を訪ねられた際にはぜひ近くにあるこの庭園に足を運んでください。きっと、なんとも素敵な所と感嘆の声を上げられることと思います。


(髙山 哲志)

 

 

 

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