常識にとらわれず、動物を見よう!


ときわ動物園 飼育技師 川出比香里さん

 「サルの好きな食べ物ってなんだろう?」

 こんな質問をすると、多くのこどもたちが「ばななー!」と元気に答えてくれます。確かにサルはバナナのような、甘くておいしいものが大好き!でも実は、果物を普段のエサにするのはあまり良くないようなのです。

 多くの野生のサルが食べている果物は、糖分が少なく繊維質が多くてあまりおいしいものではないことが生息地での調査で明らかになっています。でも、動物園でエサとして与えている果物はスーパーにならんでいるのと同じ、甘くておいしいバナナやリンゴ。これらは人の食用に品種改良や栽培方法の工夫を重ねてつくられたもので、野生の果物とはまったく別物です。甘すぎる果物はサルの体に合っていないので、肥満や虫歯、その他色々な病気の原因になる恐れがあります。そこで、ときわ動物園では果物をやめ、野菜中心のエサに変えて飼育しているサルがいます。本来の食べ物に近づけることで、毛並みや体格が良くなるなど、いい変化がたくさんありました!私も海外の動物園のまねをした取り組みですが、これから日本でも多くの動物園で取り入れられるといいなと思います。

 一般の人だけでなく、動物園の飼育員にとっても「サルにバナナ」は常識でした。でもそれは少し違っていました。このように、野生動物の調査・研究が動物園動物のくらしをより良く変えるきっかけになることはサルのエサ以外にもたくさんあるはず。野生でこうだから、ということが飼育されている動物に必ず当てはまるわけではありませんが、そうした発見と試行錯誤の繰り返しが動物のくらしに活かせるのです。逆に飼育動物からわかることが野生動物の保全に役立つ日もくるかもしれません。そう思うとわくわくしませんか?

 動物園も野生動物や自然とつながっているんだよ!ということ、飼育管理を通しても伝えていきたいと願って日々動物たちに接しています。

 

(かわで ひかり)


 

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