【獣医室から】ラニー博子のいたずら


  ゾウの飼育担当になって早いもので1年が経ちました。「最初の1年は見とくだけ」との先輩の一言から始まったのですが、今ではラニー博子(以下、博子)に触れたり、柵越しではなく同じ空間で作業したりするところまで進んできました。

 その中でも自分にとって衝撃だった作業が博子の口に直接リンゴを入れることでした。いくら先輩が横についてくれているとはいえ、あの大きな巨体の側まで行き、口の中に手を入れるというのは、半端のないぐらいの恐怖でした。そしてその恐怖のあまりに目をそらしてしまったり、一歩後ろに下がってしまったりと、大事には至らなかったものの博子の格好の餌食になりかねない行為をしてしまったのでした。

 

ラニー博子の口にリンゴを入れる筆者

ラニー博子の口にリンゴを入れる筆者

 

 ゾウという動物はすごく賢くていたずら好きな動物なので私がとってしまった行為は博子からすると「コイツちょっと脅かしたら面白い反応をする奴やなぁ」と思われたに違いありません。その後の博子の行動は少しずつエスカレートしていきました。例えば先輩がいない時に博子を観察していると鼻を出してきたり、馬栓棒(ゾウ舎の放飼場への出口にあって上下させて、ゾウが行き来できなくする装置)にアタックしてきたりしてきました。最初の頃はそんな行動に反応してしまい、少し下がってしまったり、声を出してしまったりしましたが、最近では徐々に慣れてきて、反応しなくてもすむようになりました。

 

大きく口を開けたラニー博子

大きく口を開けたラニー博子

 

 すると博子は新たな行動をしてくるようになりました。新しくする作業の中でいたずらをしてくるのです。“おやつタイム”の時に先輩が青草をもって放飼場に入り、続いて私が糞を回収するために一輪車を押して放飼場に入ります。博子は「待て」の号令で左前脚を少し上げて静止します。「よし」の号令で青草のところまで行き食べ始めるのですが、その青草まで歩く間に、私を睨みつけたり、放飼場内で先輩と2人で観察している時に徐々に近寄ってきて先輩をかわして私のほうに詰め寄って来ようとしたりするのです。さすがに今でも柵のないところなので、近寄ってくるとちょっと下がってしまいます。

 最近ではプールの中にいる博子にホースで水をかけてやる「水浴び」もさせてもらえるようになりました。実はここでも博子のいたずらは続くのです。先輩に「博子のかけてほしい所にかけたって」と言われました。博子との距離も離れているので正直ちょっと気持ちも楽でした。いざ放水を始めると博子はあっちこっち鼻を出したり、そうかと思えば口を開けて前足を水上に出したりしてきます。博子の納得できるところに水をかけることができないと鼻で水を吸い上げてわざと私にかかるように噴射してくるのです。

 これからも新しい作業段階に進むたびに、博子からのいたずらは続くと思いますが、私の与えられた試練だと考え、頑張っていきたいと思っています。


(長谷川 真登)

 

 

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