動物のエサとウンチ


 天王寺動物園では、約200種1000点の動物を飼育しています。その中には、お母さんのおっぱいを飲んで成長する哺乳類、鳥類、爬虫類(はちゅうるい)(トカゲやカメの仲間)、両生類(カエルやイモリの仲間)、魚類がいます。

 哺乳類の仲間を食べるもので分けると、肉類を主に食べる肉食動物、植物を主に食べる草食動物、肉類と植物を両方食べる雑食動物に分かれます。私たちヒトは、肉も野菜も食べる雑食動物です。
草食動物には、胃が1つの仲間(ウマの仲間、ゾウ)と胃が3つ以上の動物(ウシの仲間)がいます。胃が3つ以上の動物は、胃で部分的に消化した食べ物を口に戻して咀嚼(そしゃく)する過程を繰り返す「反芻(はんすう)」をしています。

 天王寺動物園では草食動物のエサとして、干草や青草、野菜、果物、草食動物用ペレット(ドッグフードやキャットフードの動物園動物版です)などを与えています。天王寺動物園の調理場(もちろん動物用)は、オオカミ舎の裏側あたりのバックヤードにあります。調理場の中はコンクリートの床にステンレス製の調理台、大きなまな板、業務用冷凍冷蔵庫など、ヒトの給食場に似たつくりです。調理場では毎朝、飼育員がそれぞれの動物に与えるエサを、切ったり混ぜたりして調理しています。動物の体調によって、与えるエサの量や内容は毎日のように変わります。野菜や果物の切り方も、動物の種類や年齢によって変えています。


エサ

 では、このエサを食べている動物は誰でしょう? サツマイモ、ジャガイモ、ニンジンなどの野菜、リンゴやバナナなどの果物、青草が見えますね。これらに加えて、この動物は干草もたくさん食べています。
その動物のウンチはこちらです。

 

さて誰のウンチでしょう?

 重さは1kgほどもあります。大きなまるいウンチです。さて誰のウンチでしょう?

 

 

 

 

 正解は、アジアゾウのウンチでした。ゾウは、この大きなウンチを1度に何個もします。 ゾウのウンチを拡大して見てみると、消化されずに残っている細長い草を見ることができます。

アジアゾウのウンチ

  ゾウは胃が1つの単胃動物です。そのため、消化されない草がウンチにそのまま出てきます。

ウンチをするラニー博子

ウンチをするラニー博子

ラニー博子とウンチ

ラニー博子とウンチ

 

 草食動物のクロサイはゾウより少し小さいサイズのウンチをします。クロサイはゾウと同じ単胃動物ですが、草よりも葉を好んで食べるのでウンチに葉の欠片が残っているのを見ることができます。
反対に、胃が3つ以上の動物(複胃動物)は食べたものをしっかり消化できるので、ウンチに草や葉などはほとんど残りません。キリンやエランド、ヒツジは複胃動物です。

 では、カバのウンチはどのようなものでしょう? 見たことがありますか? 雄のカバは、ウンチをしながら尾を左右に細かく振ってウンチを周囲にまき散らすことがあります。縄張りの主張や威嚇のためのウンチのやり方で、これを「まき糞(ふん)」と言います。天王寺動物園のカバのテツオも、プールから陸地に上がるときにまき糞(ふん)をすることがあります。

 コアラのウンチは、2cmほどの長さの紡錘形です。コアラはユーカリしか食べないので、ウンチはユーカリのいい匂いがします。

 さて、肉食動物はどんなエサを食べているのでしょうか?

 天王寺動物園では、肉食動物に牛肉(赤身)、牛レバー、馬肉、鶏肉などを与えています。また、週に1日や2日、絶食日(ほとんどエサを与えない日)を設けています。エサをもらえないなんて、動物がおなかを空かせて可哀そう!と思われるかもしれませんが、私たちヒトと違って、野生の肉食動物は毎日エサを獲得することはほぼないため、絶食日を設けて内臓を休ませることは肉食動物の健康に良いのです。

 では、肉食動物はどんなウンチをしているのでしょうか?

 肉食動物のウンチは、ヒトやイヌ、ネコなどのウンチに似た形をしていますが、ライオンやトラのウンチは直径が500円玉よりもずっと太くて立派(?)です。肉食動物は草食動物と違って、座ってゆっくりウンチをすることができるので大きなウンチをします。そんなウンチの中には、動物の毛がたくさん入っています。天王寺動物園では、毛のついた肉は与えていないのになぜでしょう? ネコを飼われている方はご存知かもしれません。ウンチに入っている毛は、その動物が舌で毛づくろいをした結果、おなかに入った自分自身の毛なのです。動物園の肉食動物はネコよりもずっと舌がザラザラで、まるでヤスリのような舌をしています。

アムールトラ

アムールトラ

ライオン

ライオン

 また、猛禽類(もうきんるい)(ワシやタカの仲間)には、牛肉やマウス、ラットなどを与えています。マウスやラットは冷凍されたものが動物用のエサとして販売されているのでそれを購入しています。
天王寺動物園では、150種類以上の品物を動物のエサとして与えています。それぞれの動物に適したエサを選び、必要な量を計算し、それぞれの動物に適した与え方を考えるのも私たちの大事な仕事です。また、そのエサを食べた動物がどんなウンチをしているのかを毎日、観察することも、動物の健康管理のためにとても大切です。

 天王寺動物園にお越しの際に、動物がエサを食べていたり、ウンチをしている時はぜひよく観察してみてください。きっと新しい発見があるはずです。

 

 

 

(市川晴子)

 

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