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天王寺動物園では現在13種類のサルのなかまを飼育しており、ほとんどの種が定期的に健康診断を受けています。なぜかというと、ヒトとサルとが同じ病気にかかる可能性が高いからです。飼育しているサルが病気を来園者の方や飼育員にうつしてしまったり、逆に来園者の方や飼育員からサルに病気がうつってしまったりといったことが考えられるため、予防のために健康診断を行っています。 ヒトの健康診断であればレントゲン、採血など簡単にできるのですが、サルたちにとっては押さえつけられたり、針で刺されたりするのはいやなことでしかありません。作業中にサルが動きまわるとサルもヒトも危険なので、麻酔で眠らせてから健康診断の作業を行います。健康診断で一番重要なのは麻酔であるといっても過言ではありません。麻酔が十分に効いていないと、大きな事故につながる可能性があります。特に体の大きなチンパンジーは力が強く、するどいキバも持っているため危険です。麻酔が効いていないと判断した場合は健康診断を中止することもあります。チンパンジーやドリルに麻酔をかけるときには麻酔銃を使います。どちらも痛い思いをするのが分かっているので、麻酔銃を構えた時点で逃げ回ったり、隠れたりして、麻酔をかけるまでに1時間以上かかることもあります。また、麻酔銃を構えると、チンパンジーからウンチを投げつけられることもあります。チンパンジー、ドリル以外のサルたちは網やシュート檻(おり)(寝室から展示場に出る通路:シュートにはめ込む檻(おり))で捕まえてから麻酔を注射します。 健康診断では体重測定、レントゲン、採血、ツベルクリン注射、咽喉頭(のど)と直腸内の細菌検査、歯科検診、マイクロチップの確認といった項目を行います。動物園で飼育している動物たちは定期的に体重を測るということだけでも難しいものが多く、年に1回健康診断の時に体重を測っているサルたちは恵まれているのかもしれません。餌が足りているかな?食欲が落ちていないかな?餌を取られていないかな?定期的に体重を測ることでこういった疑問が解決することがあります。
エリマキキツネザルの採血
チンパンジーの歯科検診
このように現在定期的に健康診断を行っているのはサルの仲間だけですが、トレーニングの普及によってほかの動物でも少しずつ健康診断が行えるようになってきています。動物が少しでも健康で長生きできるように微力ながら手助けしていきたいと思います。
(越智 翔一)
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