近畿地方の動物園水族館臨床研究会が、7月8日に行われました。今年は新型コロナウイルス感染拡大防止のため、ZOOMを使用したオンラインでの開催で、14園館から30名の参加がありました。近畿地方の動物園・水族館の獣医師と飼育員が集まり、動物の診療や治療についての報告を行う研究会です。動物の治療は飼育員と獣医師で協力して行うことが多いため、この研究会では毎年分担して発表しています。ZOOMでの発表は緊張しましたが、実際に人前で発表するよりは落ち着いて参加できました。ただ、ZOOMの使い方はよくわかっていなかったので、動物専門員のIさんに助けてもらいながらの参加でした。はじめのログインに手間取って遅刻しかけたり、間違えて「手を挙げる」ボタンを押していて突然当てられたりと、普通の会議では起こらないようなハプニングもありました。
天王寺動物園からは、「てんかん発作を起こしたシシオザルの症例」という題で、シシオザルのバケット(雄・17歳)の症状の経過や実施した対策について発表しました。その内容もご紹介したいと思います。バケットはときどき痙攣(けいれん)発作を起こすのですが、生まれつき発作が見られていたわけではありません。バケットの生まれた長野市城山動物園のお話では初めて発作は12歳の時とのことでした。兄のバターとは時々闘争もしていたようです。昨年、バターとバケットが天王寺動物園に来てからも、時々発作や闘争があり、体に傷ができていることがあったため、兄弟は隣同士で別々の部屋に分けていました。しかし今年に入った頃、発作が増えているかもしれないと飼育員から報告がありました。そんなある日、寝室に血痕があり夜間に発作を起こした様子だったため、念のためにビデオを設置して観察すると、展示場でも数回発作があり、台から落下もしていました。
シシオザルのバケット
その様子を見て、飼育員と動物専門員、獣医師で相談して、まずは日常的なビデオ観察をはじめて、落下防止のネットを張りました。また、脳に明らかな異常がないかどうかの確認のため、大阪府立大学の先生方にMRIの撮影をしていただきました。検査では発作につながるような明らかな原因はありませんでした。
最近のバケットの活動的な様子
なぜか、ちょうどビデオ観察を始めた頃からバケットに発作の兆候はほとんどなくなりました。以前よりのびのびとした様子で、隣にいるブラッザグエノンと顔を突き合せたり、お客さんを眺めたり、おやつや収容の時に慌てて下に降りていったりしています。おそらく、ちょうど同じ時期にバターが雌のディーちゃんと同居のために離れた部屋に移動したため、少し落ち着いたのだと思います。1度起こると数回あった発作も、今では数カ月に一度で、発作の時間も短いため様子を見ています。
オンライン研究会でもアドバイスももらいましたので、引き続きバケットが過ごしやすいように見守っていきたいと思います。
(小川 由華)