天王寺動物園「なきごえ」WEB版

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新型コロナウイルス感染拡大の天王寺動物園への影響

  新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行が世界中に大混乱を引き起こしています。もちろん、天王寺動物園にも大きな影響を与えました。執筆時点(2020年6月)で収束に至っているわけではありませんが、本稿では、ここまでの経緯をまとめておきたいと思います。

 新型コロナウイルスの感染について意識するようになったのは、今年の1月23日に中国湖北省の武漢という都市が封鎖されたというニュースを見た頃です。中国政府が行った感染拡大防止のための措置ですが、こんなことが現代でも起こるのか、と驚いた覚えがあります。

 日本で新型コロナウイルスの感染が大きく話題になったのは、横浜に到着したクルーズ船のニュースあたりからでしょう。2月3日に寄港したクルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号に対して、日本政府は乗員乗客の下船を許可せず、船上で検疫を行うことになり、そこから船内での感染拡大が連日報道されましたし、政府の対応も混乱しているように見えて、不安な気持ちになったものでした。

 感染が拡大していく中、2月19日、大阪府は府主催のイベントを1カ月間中止することなどを発表、大阪市でも同様の措置をとることとなり、市有施設である当園では2月22日(土)から屋内施設のは虫類生態館(アイファー)、夜行性動物舎、旧コアラ館といった施設を封鎖しました。また、3月に開催を予定していた春のナイトズーやドリームデイアットザズー(障害者を招待するイベント)の中止も決断しました。

アイファーの閉館の案内

アイファーの閉館の案内

  2月27日、大阪市は29日からの大阪市立の幼稚園、小中学校の一斉休校を発表、政府においても全国の学校に対して3月2日からの休校要請が出されました。休校措置が逐次拡大していき、また不要不急の外出の自粛が呼びかけられる中、動物園へのお客様の集中を避けるため、当園も3月3日から休園することとしました。

 この時期は、他の近畿の動物園水族館も同様に臨時休園休館となっていたのですが、この頃に持ち上がった動きを一つ紹介します。各園館とも休園期間中に何かできないかと考えてSNSでの発信を頑張り始めていました。そこで、各園館の活動を横に繋ぎ園館全体でこれを盛り上げようと、近畿の園館長の間で共通ハッシュタグ「#休園中の動物園水族館」を設定したところ、他の地方の園館も追随し、全国的なムーブメントに繋がり、ステイホーム中の動物園水族館ファンのみならず、あらゆる人たちに動物たちの姿を届けることができました。

 外出自粛が長期化する中、3月中旬には専門家会議等の議論を踏まえて換気の問題を抱えない屋外施設の再開が模索されるようになり、当園も3月24日からは、屋内施設は引き続き閉鎖、集客イベントは中止した状態で、警戒しながらの開園を行うことになりました。

 一方で、3月下旬には感染者数が全国的に拡大していき、3月24日には2020年のオリンピックの延期も発表されました。この感染者数の拡大傾向を踏まえて、4月7日には、政府の緊急事態宣言が大阪府を含む7つの都府県に対して発令されるに至ります。そしてここでは、人と人との接触を7割から8割減少させることを要請されました。

 多くの職種に対して活動の自粛要請がなされ、もちろん動物園も自粛が至上の命題。緊急事態宣言の翌日の4月8日から再度臨時休園となりました。

 動物園が休園中でも動物の飼育の仕事はなくなりません。飼育員や獣医師には動物のお世話を頑張ってもらう必要があります。動物園として最も怖いのは、飼育員の誰かに感染者が出て、飼育のチームが濃厚接触者という扱いになって、チームがまるごと出勤停止になってしまうことです。そうなってしまうと動物の健康管理ができません。そこで、毎日全員が集まって行っていた朝の体操と朝の全体ミーティングを中止、各飼育員もできるだけ獣舎ごとの詰所にいてもらうなど、集中を避けるようにしましたし、昼休みも分散して昼食をとってもらうことにしています。これには万が一にも職員にコロナ陽性者が出たとしても、全員が自宅待機になることを避けることが狙いです。他にも、職員には手洗い、マスク、換気の励行を呼びかけるなどを行っており、幸いにも、本稿執筆時点では当園スタッフの感染者は出ていません。
5月中旬になると、感染者数がピークアウトしてきました。経済活動を動かす方向に政策の舵が切られ、5月21日には大阪府が緊急事態宣言の区域から解除、25日には全国的に緊急事態が終了した旨が宣言されました。

 動物園でも再開に向けた準備を進め、5月26日から再開することができました。ただし、屋内施設やふれあい広場は引き続き閉鎖、おやつタイム等のイベントも中止した状態でのスタートです。対策としては、お客様へのソーシャルディスタンス確保の呼びかけ、園内の手すり等の消毒の強化などを行いました。また、お客様が多く園内の混雑がひどくなってしまった場合には、整理券を配布して入園を制限することも何度か行いました。また、6月24日からは閉鎖していたは虫類生態館(アイファー)や夜行性動物舎を再開させることができました。

ライオンの写真を使ったソーシャルディスタンスの呼びかけパネル

ライオンの写真を使ったソーシャルディスタンスの呼びかけパネル

園内のベンチにもソーシャルディスタンスの呼びかけパネルを設置

園内のベンチにもソーシャルディスタンスの呼びかけパネルを設置

展示場でのソーシャルディスタンス等の呼びかけパネル(ライオン舎前)

展示場でのソーシャルディスタンス等の呼びかけパネル(ライオン舎前)

 今後とも、新型コロナウイルス感染症の拡大状況を踏まえて、ソーシャルディスタンス等について警戒しながら、イベントをどうするかなど、動物園サービスの提供範囲を決めていくことになると思います。コロナとはこれからも付き合っていくしかないようですが、難しい時代になったものです。

(牧 慎一郎)

 

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