天王寺動物園「なきごえ」WEB版

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新人獣医師奮闘中

 こんにちは。昨年の4月から天王寺動物園で勤務している獣医師です。

 突然ですが、みなさんは、病院やお医者さんは好きですか?いつもの先生ならいいけど、初めて行く病院は緊張するという方はいませんか?

 動物はというと、獣医師は他のスタッフと同じ服装なので、初めは気づきませんが、知らない人が苦手な動物たちは警戒します。その上、獣医師が治療をしようとすると、動物たちは追いかけられたり、痛い思いをしたりすることが多くなります。そうすると、獣医師が来ると隠れたり、興奮したりしてしまい、検査や治療がしづらくなってしまうのです。

 そこで、私が働き始めてすぐに飼育員さんたちから、動物に嫌な印象を持たれる前に、動物に良い印象を持ってもらった方がいいといわれました。ただ、獣医師にはいろいろな仕事があり、ずっと動物たちのそばにいられるわけではありません。そのため、一部の動物から少しずつ関係づくりを始めています。一番簡単にできるのは、普段から動物たちの様子を見に行き、声をかけたりすることです。動物たちに「いたのか」、「また来たのか」くらいに思ってくれればいいと思います。

 他には、動物に餌をあげたり、マッサージをしたり、この人が来ると良いことがあると思ってもらうことです。ハズバンダリートレーニングを行っているクロサイやマレーグマなどは、新人である私に対しても拒否反応はありませんでした。なので、なるべくトレーニング時に顔を出したりするようにしています。

 

クロサイのサミアに大好きなペレットをあげる様子

クロサイのサミアに大好きなペレットをあげる様子

 チンパンジーたちは、知らない人が苦手なこともあり、初めのうちは私が室内に入った途端に大興奮していました。そのため、最初は遠くから声をかけながらピーナッツを投げ入れていました。少しずつ距離を縮め、最近では部屋に入ってもあまり興奮しなくなり、こちらのサインに応じて手を出したり、手渡しでも餌を受け取ったりしてくれるようになってきました。怪我や体調不良の時に体を見せてくれたり、夏の検診の時に直接麻酔の注射ができたりすればいいなと密かに思っていますが、まだまだ時間がかかりそうです。

 ニホンジカのゑつ子には、一度処置をした後から大警戒されてしまいました。それまでは大丈夫だったのに、私を嫌なものと認識したようでした。完全に嫌われる前に、地道に餌をあげに行き、トレーニングにも参加するようにしました。最近は私が餌をくれる人と認識したようで、駆け寄ってきたり、体もさわらせてくれたりするようになりました。

ニホンジカのゑつ子とのスキンシップ

ニホンジカのゑつ子とのスキンシップ

 少しずつでも、獣医師にストレスを感じない動物が増えてくれたら、彼らの健康管理もより充実したものになると信じて、地道に取り組みを続けていきたいと思います。

(小川 由華)

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