天王寺動物園「なきごえ」WEB版

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「ふれあい」って?

 2019年12月17日~19日に、「第67回動物園技術者研究会」を開催しました。これは、公益社団法人 日本動物園水族館協会(以下、JAZA)が毎年開催している研究会のひとつで、令和初開催の今回は、天王寺動物園がホスト園を務めました。12月17日、18日に大阪市内のホテル「ヴィアーレ大阪」を会場に研究発表会を、19日に天王寺動物園において施設見学会を行いました。JAZAの総裁である秋篠宮皇嗣殿下も御臨席されました。

 研究発表会で、当園はクロサイの行動調査に関する口頭発表と、ふれあい体験での話題提供方法に関するポスター発表を行いましたのでその内容をご紹介します。

(市川 晴子)

◇ヒガシクロサイの行動を指標とした繁殖行動発現予測

(上野将志、中山宏幸)

ヒガシクロサイは通常単独で行動する動物のため、飼育下では他の個体との同居で闘争が起こることがあります。また、繁殖期には雄の行動に変化が見られますが、雌ではあまり変化がないことも知られています。今回、天王寺動物園で飼育しているクロサイ2頭(雄のライ、雌のサミア)のうち、雄の行動観察から発情期をとらえる兆候を見出すことができました。

クロサイのライ(左)とサミア(右)

クロサイのライ(左)とサミア(右)

 33日間(18回)の雌雄お見合いの後、2019年3月14日より雄と雌を日中の展示時間(9:50~16:00頃)のみ同居させました。日中の同居は現在も継続しています。雄の行動観察は、同居前の①2018年11月18日~2019年3月14日および同居後の②2019年5月1日~9月30日に実施しました。①では屋外展示場へ出た後60分間をビデオ撮影し観察した結果、83%~88%の時間を採食に費やす日が平均22日続き、その後40%~67%の時間を採食に費やす日が平均11日続くという周期性が見られました。同時期の飼育観察記録と照らし合わせると、採食時間の割合の減少に伴い、常同様歩行や発情期特有の行動といわれる笛鳴きの割合が増加したことが分かりました。②では、屋外展示場へ出した後の雌の寝室に雄を移動させ、5秒ごとの瞬間サンプリング法で10分間行動を記録した結果、常同様歩行および笛鳴きの割合に顕著な周期性が見られました。展示後の行動観察と照らし合わせると、寝室での常同様歩行・笛鳴きの割合が増加してから、平均9.8日後に雌への追尾行動、平均11.8日後に乗駕行動が見られ、常同様歩行・笛鳴きの減少に伴い雌への追尾行動は消失したことが分かりました。

クロサイの追尾行動

クロサイの追尾行動

 この結果から、採食時間の割合の減少、およびその後の常同様歩行・笛鳴きの増加が発情の指標になると考えられました。通常単独で行動するクロサイの同居において、このような行動を指標とすることは、闘争等による動物へのリスクを軽減できることから、雌雄同居のタイミングをはかるのに有用であると考えます。

◇担当者の話題提供方法の違いによるふれあい体験参加者への影響

(下村幸治、西田俊広、市成崇、長谷川真登)

 子どもの学習にとって対話を通じた教育は有効とされており、動物園での教育普及活動にも応用可能だと考えられます。そこで、ふれあい体験担当者との対話を通じた話題提供方法により、ふれあい体験参加者の発話にどのような影響があるかを調査しました。

 天王寺動物園のふれあい広場で実施しているテンジクネズミのふれあい体験を対象として、2019年8月30日~10月6日の計12回調査しました。このふれあい体験参加者の人数の上限は30名で、13:45~14:50の間に3回(各回約15分間)、入れ替え制で実施し、話題提供や注意事項の後、122cm×77cmのプラスチックケース2つにそれぞれ10頭ずつ収容したテンジクネズミに触れてもらいます。今回の調査では、1回目の体験では①担当者と参加者との対話を重視した話題提供、2回目の体験では②担当者が知識を伝えることを重視した話題提供、3回目の体験では③ボランティアの学生が①にならって話題提供を行いました。

触る前と触った後に描いてもらったテンジクネズミの絵

なお、提供する話題の内容は3回とも同じものにしました。
・大人から子どもへのテンジクネズミの観察の促し、触れ方の説明(以下、大人→子)
・大人自身がテンジクネズミの身体について発話(以下、大人自身)
・子どもから大人へのテンジクネズミの観察の促し、触れ方の説明(以下、子→大人)
・子ども自身がテンジクネズミの身体について発話(以下、子自身)
の4種の発話の回数を記録しました。発話回数を参加者数で割った結果、①の大人→子が1.24、大人自身が0.78、子→大人が0.12、子自身が0.72となりました。②ではそれぞれ、0.79、0.41、0.09、0.41、③ではそれぞれ、0.76、0.40、0.15、0.67となりました。
③は②よりも子どもの発話が多かったことから、経験が浅い学生の話題提供であっても、対話を重視することで、一方的な知識の提供よりも子どもの発話を促すことが分かりました。また、①は②、③と比較すると大人の発話が多かったことから、担当者との対話が大人の発話を促すことが分かりました。テンジクネズミのふれあい体験においては担当者と参加者、および参加者同士の対話を促すことで、観察や発見を支援する効果が期待できます。

対話を重視した話題提供

対話を重視した話題提供

知識を伝えることを重視した話題提供

知識を伝えることを重視した話題提供

(下村 幸治)

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