天王寺動物園「なきごえ」WEB版

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動物園や水族館の新しい楽しみ方

  皆さんはじめまして!「つまき♪」と申します。兵庫県に6年間住んでいたこともありますし、関東在住の今でも毎年、大阪市天王寺動物園に行っています。

 私のライフワークと仕事は、「動物さんとの幸せ共有体験を楽しむ人を増やす」ことです。「幸せ共有体験」は英語ではShare the Happiness!(シェア・ザ・ハピネス!)なので、略してsheapi(シェアピ)という新語を作ってみました。ということで、上記の肩書でシェアピのコンテンツづくり・発信・園館等動物施設へのコンサルティング・情報提供・講演・執筆・イベント主催・出演・メディアへの協力・グッズ販売などを行なっています。園館とは「動物園や水族館などの動物施設」のことです。人は動物さんを無意識のうちに下に見がちなので、それを防ぐ意味も込めて「さん」づけにしています。

マレーグマさんには選択肢がいろいろ用意されていて、健康度とともにマレーグマさんの魅力を引き立たせます。

マレーグマさんには選択肢がいろいろ用意されていて、
健康度とともにマレーグマさんの魅力を引き立たせます。

 なぜこのような取り組みをしているかといえば、動物さんが大好きなので、人生をかけてその状況を変えたいからです。これまでに国内外の270の動物施設を訪れ、現場で話を聞き、勉強と試行錯誤を重ねて、改善策を練り上げてきました。それが、「シェアピ式園館活性法」です。活性化を応援する理由は、園館をたたむにしても続けるにしても、活性化をして力を付け、動物さんや職員さんの状況改善をする必要があるからです。そしてこれは、「園館の新しい楽しみ方」でもあります。

 園館改善の主役は、職員さんとお客さんです。「お客さん」とは、実際の来園者だけでなく、ネットで見ている人やメディアなども含みます。そんなお客さん(つまり皆さん)、そして職員さんたちの脳内にある「園館とは何なのか?」が変わることで、園館は変わります。

 園館とは、保全教育施設です。そして保全とは、「この星で、これからも、動物さんと人が一緒に幸せに暮らしていけるようにすること」です。なので保全教育は「動物さんとの幸せ共有体験(シェアピ)を楽しむ人を増やす」こと。こういう人が増えれば、地球も存続できます。そこで「シェアピを楽しむ人」を「シェアピスト」と名付けました。園館の任務は「シェアピストを増やす」こと。しかも、目の前に生きた動物さんたちがいてくれる園館だからこそできることです。まずは目の前の動物さんとのシェアピを楽しむ。そうして動物さんへの強い関心が生まれて初めて、野生動物さんの保護などにも意識が向きます。「楽しむ」を重視している理由は、①ほとんどの人が動物さんに本当は関心がない状況の中で大事な要素となるから。②人は自分に利益がある時に行動する。「楽しい」は利益の第一歩だから。

飼育員さんがウサギさん宅に芝生を移植。感触や食べることを満喫している様子が素敵です。

飼育員さんがウサギさん宅に芝生を移植。
感触や食べることを満喫している様子が素敵です。

 このように、シェアピストを増やす取り組みが、園館に存在意義(保全教育)と持続性(集客)を創出します。

 そして、シェアピストを増やす方法は、「動物福祉向上の取り組み」+「その説明」+「それへの参加」です。

 まずは、飼育員さんを中心とした職員さんたちで動物福祉向上に取り組み、動物さんの幸せ度をアップさせます。それを説明することで、お客さんは「なるほど、よかった♪」と幸せ共有体験(シェアピ)ができます。さらにそれに参加することで、楽しさと関心が強まります(行動経済学の理論です)。

 肝心の「動物さんの幸せ」ですが、「答えが無限にあるからこそ、動物さんがポジティブに選べる選択肢を増設し続けることで答えに近づける」と考えています。自分に置き換えて考えてみると分かりますが、何を幸せと思うかは下手したら日に何度も変わります。動物さんも同じなので、「その動物さんの生態と個性と今の気分が必要とする選択肢」を用意し続けることが、飼育員さんの重要な仕事のひとつです。

 選択肢とは、食べ物・水・居場所・屋根・暑さ寒さ対策・仲間・広さ・楽しさ等々です。「もし自分がここで暮らすとしたら何が欲しいかな?」と考えてみてください。それを動物さん宅にひとつでも増やすことを、応援して楽しむのがシェアピです。

 天王寺動物園の例で選択肢増設を紹介します。マレーグマさんやホッキョクグマさんなどのクマさん宅には、遊具やフィーダーなどが用意されています。フィーダーとは、食べ物を得る楽しさを再現した容器です。そしてクマさんたち・ラクダさん・ヒツジさん・野間馬さんなどは、健康ケアのためのトレーニングも実施中。ハズバンダリートレーニングという、動物さんに強制するのではなく協力してもらって、採血や体温測定などをするものです。ラクダさんなど体重測定ができる動物さんも増えています。地道な積み重ねを必要とするトレーニングですが、動物さんの気持ちの面でも前向きな刺激(楽しみ)になっています。

ハズバンダリートレーニングで野間馬さんの健康ケアの各種が次々実現。他の園舘をリードしています。

ハズバンダリートレーニングで野間馬さんの健康ケアの
各種が次々実現。他の園舘をリードしています。

 飼育員さんは、動物さんの命を預かる非常に高度な専門職です。仕事内容が多岐にわたりますので、意欲と能力が発揮できる組織づくりが基盤となります。天王寺動物園でも動物専門員さんの導入が始まりましたが、こうした専門家がきちんと稼働することも大事です。

 こうした背景を把握して頂いた上で皆さんにオススメする「園館の新しい楽しみ方」は、そうです、「シェアピ(動物さんとの幸せ共有体験)」です。「動物福祉向上の取り組みと、その説明と、それへの参加を楽しむ」を、ぜひ体験してみてください。 具体的には、まずは現場やネットなどで、飼育員さんの取り組み(選択肢増設とその説明)に注目します。そして動物さんの選択肢が増えたことを知って「よかった♪」と喜ぶのがシェアピです。実際、動物さんは選択肢が増えればそれだけ行動やその動物さんの魅力が発揮されますので、魅了されます。 さらに楽しさを増幅させるのが「参加」です。選択肢増設イベントに参加したり、資金・材料・労力・情報・アイデアなどを寄付する。選択肢増設の様子をネットでシェアするだけでも、応援になりますし、当事者意識が高まって楽しさが深まります。また選択肢増設に励んでいる飼育員さんを応援することが動物さんへの応援にもなりますので、労働環境の改善や組織改革にもどんどん意見を出し、より前進を図っていくことが大切です。

  つまるところはこういうお客さん(シェアピスト)が増えますと、天王寺動物園だけでなく多くの園館が、その存在意義と本当の楽しさがある施設に変わることができます。ぜひシェアピ式で園館を楽しんでみてください。

ハズバンダリートレーニングで野間馬さんの健康ケアの各種が次々実現。他の園舘をリードしています。

鳥さんに「飛べる広さ」という選択肢があると、魅力も激増です。

(つまき♪)

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