動物専門員だより③
動物園ってどんなところ?~ちょっと難しい動物園のはなし~
親子向けプログラムでガイドをしている様子
「動物園ってどんなところ?」と聞かれたら、みなさんは何と答えますか?
動物がいるところ!遊べるところ!デートするところ!…な感じでしょうか。それぞれ頭に浮かんだことはあると思いますが「勉強をするところ」と答えた方はいないのではないでしょうか。いたらごめんなさい。動物園は、学びの場、教育施設として“教育普及活動”にも力を入れています(当園も例外なく)。飼育員や獣医師が行うガイドはもちろん、展示場にある動物紹介も教育普及活動のうちのひとつです。ではなぜ教育普及が必要なのでしょうか。ただ楽しく園内を回る、それももちろん大事なことです。でも、なぜその動物が展示されているのか、どんな環境で暮らしているのかを知ることもとても大事なことです。
動物たちを通して、図鑑やテレビでは伝わらない「鳴き声」や「におい」などのリアルを体感する。そして、動物や自然への興味・関心を深め、地球温暖化などの環境問題について考える、そこからさらに行動に移すことが、動物たち、私たちの未来を守ることにつながるんです。これが動物園の大事な使命。はじめに戻りますが、動物園は勉強をするところ、といいながら、勉強大好き!とはなかなかいえませんよね…ですので、今まで以上に「楽しみながら学べる動物園」を目指し取り組んでいきます。
(廣谷 あおい)
健康寿命を延ばす取り組み
“ふれあい広場”にフタコブラクダのジャック27歳が暮らしています。フタコブラクダでいうこの年齢はもうかなりの高齢になります。そんなジャックの暮らしを見ていると立っている時間が短いのが気になっていました。立つ機会が少ないと足腰も弱くなり、健康に長生きすることができなくなります。そこで大阪ECO動物海洋専門学校の学生さんがジャックの環境エンリッチメントで卒業研究をしたいと申し出がありその課題に共同で取り組みを開始しました。環境エンリッチメントといえば退屈な時間を減らしたり、異常行動が減少するように取り組んだりするのですが、ジャックに関してはいかに自発的に立ってもらい、歩行時間を増やす環境を提供するかが目標になります。そのためには餌台の工夫や採食回数を増やしたり、フィーダーを設置したりして起立した状態での採食時間を延ばすなどの採食エンリッチメントに焦点を絞ることにしました。取り組んだ内容は、餌台の増設、立って飲む水飲み台の設置、餌である枝葉を差し込むことができる塩ビ管を柵に取り付け、消防ホース利用のフィーダーの設置、歩きやすいように草刈りをして砂を敷き、青草を食べる時間が延びるようヘイネットも設置をしました。その結果、最近では以前は行かなかったグラウンドの端まで歩くようになり、行動範囲も広がり、起立、歩行時間も延びました。ただ長生きするのではなく、健康に長生きしてもらえるように引き続き健康管理もしながら環境エンリッチメントにも取り組んでいきたいと思います。
消防ホースのフィーダーから餌を食べるジャック
(下村 幸治)