天王寺動物園「なきごえ」WEB版

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動物園で研究!?

 皆さんは「マイクロチップ」をご存じでしょうか?マイクロチップとは個体識別標識器具のことで、動物の皮膚の下に埋め込んで装着する小さなチップのことです。すでに装着しているイヌやネコを飼っている方もいるのではないでしょうか?ちなみに私の愛猫も装着しています。
今年6月に改正動物愛護法でイヌやネコへのマイクロチップ装着が義務付けられ、3年以内に施行されることになりました。これはブリーダーなどの繁殖業者が対象で、一般の飼い主は努力義務となっています。
マイクロチップには15桁の個体識別番号が記憶されており、装着した動物の身元を証明する名札のような役割を果たしています。直径2mm、長さ1cm前後のカプセル状です。米粒1~2個分の大きさですね。以前はもう少し大きいサイズでした。小さいチップを脂肪が多い部分の皮膚の下に埋め込むので、見た目はどこに埋め込まれているのか全く分かりません。皮膚の下に装着する時は注射針より太い専用針を用います。専用のリーダー(読み取り機)でチップの個体識別番号を読み取ると、事前に登録するデータと照合することができます。動物の体内に入れてもほぼ問題はなく、電池不要で半永久的に使用できるためチップの脱落などが起こらない限り装着しなおす必要はまずありません。

左:マイクロチップと専用針  右:読み取り機

左:マイクロチップと専用針  右:読み取り機

 マイクロチップはどのような場面で必要となるのでしょうか?1つは身元確認です。ペットが迷子になってしまった場合、マイクロチップが装着・登録されていれば保護時に身元確認ができるため飼い主の元に戻れる可能性が高まります。実際に東日本大震災の時に役立ったという話もありました。ちなみにGPS機能は付いていないので迷子になったペットの場所を特定することはできません。また、海外から日本にペットを連れてくる時には装着が必要で、海外にペットを連れていく時には装着していないと連れていけない国もあるので注意が必要です。今回、改正動物愛護法で装着が義務付けられた理由の1つに、飼い主の責任を明確にしてペットの虐待や遺棄を防ぐ目的もあるようです。
このマイクロチップはどのような動物に装着することができると思いますか?イヌやネコのペットだけ?いえいえ、哺乳類から魚類までほとんどの動物に使用できます。では、動物園にいる動物も装着できるの?そうなのです。動物園にもマイクロチップを装着している動物はたくさんいます。

 動物園の動物は迷子にならないのにどうして装着するのかというと、マイクロチップは「特定動物(危険動物)」への装着が義務付けられているからです。トラやワニ、イヌワシなど約650種が特定動物の対象で、動物園の特定動物はマイクロチップを装着しています。また、多くの数を飼育している動物(例えばコウモリや鳥類)にも装着していることがあります。これはちょっと見ただけではどれもがよく似ていて区別がつかない動物の個体識別のためです。

 

左:マイクロチップ装着 右:読み取り機(リーダー)で識別番号の確認

左:マイクロチップ装着 右:読み取り機(リーダー)で識別番号の確認

 最近では、人間にもマイクロチップを装着できる時代になっています。海外では手に埋め込み、オフィスの鍵の代わりや、コピー機使用や飲み物購入時などに利用したりするそうです。日本でも、動物だけでなく人間もマイクロチップを装着する時代がくるのでしょうか・・・?

(東 奈都子)

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