天王寺動物園「なきごえ」WEB版

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動物園で研究!?

 みなさんは研究をするところと聞いたら、どんなところが思い浮かびますか。パッと思いつくのは大学や○○研究所みたいな機関ではないでしょうか。確かに、日々様々なことが研究され、成果を出しているのは間違いありません。
 でも実は、動物園や水族館もある種の研究機関なんです。動物園の役割には、種の保存、教育・環境教育、レクリエーションの他に、調査・研究もしっかりと含まれています。なので、各地の動物園や水族館では、日々何かの研究が進行中です。あまり表に出てくることはないので、みなさんの目に触れることは多くないかもしれませんが…。
 何かを研究しようとするときに必要なものは、例えば研究するための施設、分析装置などの機器、研究する人、時間などなど、様々あります。そしてそれらと並んで重要になってくるものが、研究に使う材料です。いくら研究をしたくても、材料が手に入らなければ始まりません。動物園や水族館の場合、施設、機器、人員といった部分が不足し、反対に材料は豊富にあります。普通では手に入らない希少種の血液、糞、尿、さらに死亡した場合は臓器や筋肉、骨といったものや、他にも行動を観察・分析して研究するなんてことも可能です。野生動物から材料を手に入れたり、行動を観察したりするとなると、非常に時間も手間も費用もかかりますからね。

 では、これらの豊富な材料を使って動物園が研究するにはどうするか。自力で何とかする、まあできなくはないですが、なかなか手が回らないのが現実です。それではどうするか。解決策のひとつは、大学などの研究機関との連携です。いわゆる共同研究ですね。これらの中には、研究機関側からの依頼に基づいて材料提供するだけのものから、こちらからお願いして検査してもらうもの、文字通り共同で何かやりながらデータを取って進めていくものまでいろいろありますが、研究結果(測定値や論文、学会での発表資料など)はすべて動物園に還元されます。それを参考に飼育手法や治療に役立てたり、来園者への話のネタに使ったりと、お互いに有益なものとなります。

チュウゴクワニトカゲのレントゲン写真

チュウゴクワニトカゲのレントゲン写真
大学との共同研究で、毎月レントゲン撮影して、
皮膚の中にできる骨(皮骨)の研究をしています。

 そんな中、面白い結果が出ているのに、あまり表に出てこないのももったいないと思い、何とか来園者にもアピールできないかと考えついたのが、その研究成果をポスターにして園内に掲示するというものです。大学との共同研究の多くは、学生さんの卒業研究だったりするので、最終的には論文にし、学内で発表するということが多いですが、どうせ作業をするのだから、少し内容をかみ砕いたバージョンをついでに作ってもらうのは、大学側にもそれほど大きな負担になっていない(と私は思っていますが…)ため、快く了解してもらえます。

ZIMSの開発会議の様子です。システム開発には、天王寺動物園も協力しました。

研究成果をまとめたポスター
歴代の学生が作ったフクロテナガザルの行動に関する研究のポスター。その時々の親子関係や兄弟関係など、観察してわかったことが載っています。

 動物を見ながら、そばに研究成果を掲示するポスターを見かけたら、ぜひチラっと読んでみてください。「へぇ、こんなこと研究してたんやぁ」、「こんなことがわかったんやなぁ」と思っていただけたら、研究者も喜んでくれると思います。

(佐野 祐介)

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