天王寺動物園「なきごえ」WEB版

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電子カルテを導入します

 皆さんが病院に行って診察を受ける時、お医者さんが症状や検査結果などを、紙に書いたりキーボードで打ち込んだりしているところを見かけることが多いと思います。ご存知と思いますが、診療の記録をカルテといいます。昔は、カードにペンで記入するカルテが一般的でしたが、今ではキーボードで打ち込むほうが多いかもしれません。カルテも電子化が進んでおり、特に都市部の大きな病院では、ほぼ電子カルテが用いられているようです。

動物の世界でもカルテの電子化は進んでおり、ペットを対象とした多くの動物病院などで電子カルテが用いられています。ところが、動物園・水族館においてはカルテの電子化はなかなか進みませんでした。様々な野生動物を扱うのに適した電子カルテのシステムがなかったこと、ペットや家畜の動物病院と比べて診療件数が少なく紙で十分と考えられていたこと、システムにお金がかかることなどが主な理由でした。

しかし・・・ 天王寺動物園でも、電子カルテを導入することになりました。新たに導入するのは、ZIMS(ジムズ)と呼ばれる世界共通の動物園・水族館専用システムです。ZIMSにはもともと、各施設で飼育されている動物一頭一頭の情報を管理する電子台帳としての機能があり、天王寺動物園ではこれまで台帳システムとして利用していました。数年前に、ZIMSにカルテの機能が加えられ、昨年からは日本語でも使えるようになったため、今年からカルテ機能も利用することになりました。

ZIMSが優れている点は、世界中の情報を参考にできるところです。例えば、初めてキリンを飼育することになった施設でキリンの採血を行った場合、その施設には血液検査データの蓄積がありませんが、検査結果をZIMSに入力すると、世界中の数百件の検査結果と比較して、正常値か異常値かを示してくれます。その際に入力されたデータもZIMSに蓄積されるため、他の施設の診療に役立つことになります。まさに、多くの動物園・水族館が協力して飼育動物の健康を守ろうというシステムです。

もちろん、良いことばかりではありません。システムにはそれなりの費用がかかりますし、何よりもまずは診療を行う獣医師全員がこの多機能なシステムを使いこなす必要があります。(マニュアルやサポートは今のところ英語でしか提供されていません。)とはいうものの、世界共通の専用システムを利用できることに感謝して、飼育動物が肉体的にも精神的にもより健康に過ごせるよう、電子カルテを有効に活用していきたいと思います。

電子カルテは、パソコンやタブレット端末で操作します。

電子カルテは、パソコンやタブレット端末で操作します。

ZIMSの開発会議の様子です。システム開発には、天王寺動物園も協力しました。

ZIMSの開発会議の様子です。システム開発には、天王寺動物園も協力しました。

(高見 一利)

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