恐竜というと絶滅したよくわからない生き物というイメージをもつ人が多いかもしれません。ですが、実は生き物としての恐竜を探るヒントは動物園にあります。恐竜の骨格をよく観察してみますと、現在生きている動物のからだと似ているところをたくさん見つけることができます。そこで私は、現在生きている動物と恐竜のからだの共通点を探し、恐竜のナゾにせまるという研究をしています。たとえば、恐竜ステゴサウルスがもつ背中の板状の骨の役割について、動物園にいるワニを調べることで明らかにすることができました。研究を進めてみますとステゴサウルスの板の内部の構造は、ワニのウロコの中にある骨の構造ととても似ており、同じ機能をもっている可能性が高いことがわかってきました。ですが、ワニのウロコの骨の機能を文献で調べてみると、ほとんど研究例がなく、その役割についてはよくわかっていませんでした。そこで私は動物園の方々と協力して、赤外線カメラによって、実際のワニの体温を測ることで、ワニのウロコの骨に体温調節機能があるということを明らかにしました。そのことから、ワニのウロコの骨と同じ構造をもつ、ステゴサウルスの背板も体温調節の機能がある可能性が高いということを突き止めることができました。また、鎧竜(よろいりゅう)とよばれる恐竜がもつ骨の鎧(よろい)の機能も、現在生きているアルマジロやカメの甲羅の構造と比べることで、軽くて強い防弾チョッキのような構造をしていたということがわかってきています。現在も、天王寺動物園の方々の協力を得ながら、恐竜の隠されたナゾについて解き明かす研究をしています。ぜひみなさんも動物園の動物をじっくり観察して、恐竜の隠された生態を解き明かすことにチャレンジしてみてください。
恐竜ステゴサウルスと筆者(撮影:的野 弘路)
ワニの骨格標本(ウロコの中に骨がある)
天王寺動物園のヨウスコウワニ
動物園でワニのウロコの体温を測定している様子
(はやし しょうじ)