天王寺動物園「なきごえ」WEB版

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企画展 戦時中の動物園を振り返って

 夏に毎年開催している企画展『戦時中の動物園』。これまではレクチャールームで開催していましたが、今年からはTENNOJI ZOO MUSEUMに場所を移し、気持ちも新たに企画しました。実は今回、天王寺動物園が地方独立行政法人へ移行し、企画する主要なメンバー5名のうち昨年を経験しているのは私のみという布陣で臨みました。場所が変わり、メンバーも変わり、今までとは違った企画展にしようと決意していました。それは、タイトルにも表れています。『戦時中の動物園~Our Wars, Not Theirs.~』と題し、来場者ひとりひとりが戦争を自分事ととらえてもらえるように「Our Wars, Not Theirs.(だれかではなく、私たちの戦争)」というサブタイトルとしてみました。ターゲットを主に30代以下の若い世代とし、戦争が“歴史上の出来事”や“遠い国のいざこざ”ではなく、いま私たちが暮らしているこの地球で起きていることであると実感してもらい、ひとりひとりがひとにも動物にもやさしい行動をとってもらうことをめざしました。

 導入部分には、大阪での空襲の資料を展示しているピース大阪(大阪国際平和センター)の出張展示として、学童疎開の写真を中心に並べました。当時、子どもたちにうたわれた替え歌なども掲示しながら、苦しい時代ながらもいまと変わらない子どもたちのすがたをご覧いただきました。そこから、猛獣処分により飼育員の手によって殺された動物園の動物の剥製や、世界中の動物園関係者の苦悩を報道した新聞記事などのブースへ移ります。戦争によって多くの動物が犠牲になり、多くのひとの心も痛めたことがわかります。さらに戦争を自分事として考えてもらうために、最後は身近な動物たちに関するブースとしました。あまり知られていませんが、市民と暮らしていた数えきれないほどのイヌやネコ、ウサギの命が、毛皮などを軍で利用するために奪われました。動物園の動物やペットの犠牲を目の当たりにするとみなさんの印象に残ったようで、アンケートで印象に残った展示をたずねると、剥製展示(56.2%)の次に、犠牲になったペットのブース(45.1%)が挙がりました。世界がより豊かになるためのアクションを自由記述で問うと、寄付やボランティア活動、ひとに親切にする、互いを認め合うなど、さまざまな回答が見られました。それぞれの来場者が考え、行動へとつながるきっかけになったように感じます。

 今回の企画展では、大阪暁光高等学校の学生が戦争と動物をテーマに講話をしたり、学芸員実習生がブースの一部を自ら企画・設営したりと、動物園の枠を超えたつながりも意識しました。天王寺動物園という場を通じて、若い世代が戦争について考え、ひとりひとりがアクションを起こしていく機会となったのであれば、小さいながらも世界平和へ一歩近づけたかなと思います。

企画展の様子

企画展の様子

剥製展示

剥製展示

パネル展示の様子

パネル展示の様子

犠牲になったペットのブース

犠牲になったペットのブース

(井出 貴彦)

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