天王寺動物園「なきごえ」WEB版

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カリフォルニアアシカの暮らしの変化

 みなさんこんにちは。私は、今年の4月から天王寺動物園で勤務している、新人獣医師です。今年の3月に大学を卒業したばかりなので、この天王寺動物園が初めての勤務先です。4月に働き始めて以来、毎日が新しいこと、知らないことの連続で、日々勉強させていただいています。

 突然ですが、動物園で働く獣医師というのは少し珍しい仕事ではないでしょうか。私も、まだなったばかりですが「動物園の獣医さんってどうやってなるの?」とご質問を頂くことが度々あります。そこで今回は、私がどのようにして動物園の獣医師になったのかお話ししようと思います。

 獣医師を目指す人はやはり、生き物が好きだったり、興味がある人がほとんどです。私も幼いころから生き物全般に興味があり、様々な動物と関わることのできる動物園で働けたら楽しそうだなあ、と漠然と思っていました。

 獣医師になるため具体的に動き出すのは、大学受験の時です。全国に獣医系の学部・学科を持つ大学は17あり、大学進学の際にそのどれかを選ぶことで、獣医師になる(≒獣医師免許を取得する)道がスタートします。そして入学後の6年間で、座学や実習を通して基本的な獣医学の知識や技術を身につけ、最後に国家試験を受けて合格することで、晴れて獣医師になることができます。

 また、一口に獣医師といってもそこには様々な仕事が含まれます。町の動物病院の先生は勿論、牛や鶏の健康を管理したり、それらが食品になる段階の安全をチェックする仕事、空港で海外から病気が入ってくるのを防ぐ仕事、皆さんが飲む薬を作るのに携わる仕事など…。まだまだたくさんありますが、どれも大切な仕事です。そのため、獣医学部に入ってから、本当の進路選択が始まります。それぞれの業務内容や社会における役割等を調べ、時にはインターンシップや実習に行きながら、自分が獣医師になって何がしたいのかを考え、進路を決定していくのです。

 私も自分が目指している動物園の獣医師について調べ、様々な人から話を聞くうち、ただ動物を治療するだけが仕事ではないのだと分かってきました。動物園は昔のように、動物を飼育してお客さんに見せるだけのアミューズメントパークではなくなっています。もちろん休日に足を運び、楽しい思い出を作っていただける施設ですが、絶滅の危機に瀕する動物たちを保全し、その調査研究を行うため、第一線で活動する組織でなければいけません。それを知るうちに、やはり自分も獣医師としてその活動に参加したいと強く思うようになりました。そして、昔はただなんとなくでしたが、明確に動物園への就職をめざし始めました。

 動物園勤務の獣医師は、各動物園で毎年募集が出るわけでなく、全国どこの動物園でどれだけの募集がかかるか分かりません。また募集が出る時期も様々なため、就職活動中は常にアンテナを張っておく必要があります。私も、「全国どこに行ってもいいので動物園で勤務したい」という気持ちで就職活動を行っていましたが、ご縁があり、幼いころから慣れ親しんだ天王寺動物園に就職することができました。

 動物園の獣医師を志してから10年以上、ようやくスタートラインに立てたことを本当に嬉しく思っています。この天王寺動物園で、現在の、そして未来の人と動物たちのために出来ることを考え、獣医師として貢献していきたいと強く思う毎日です。

(高見 しずく)

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