天王寺動物園「なきごえ」WEB版

バックナンバー

フンボルトペンギンの成長過程

 現在、天王寺動物園では「フンボルトペンギン」という種類のペンギンを飼育しています。 くちばしの周りのピンク色と、胸の1本の黒いラインが特徴のペンギンです。 ペンギンは、雪が降る地域で暮らしているイメージがあるかと思いますが、このフンボルトペンギンは、南アメリカのチリやペルー沿岸地域の温帯で乾燥した地域で生活しています。 そんなフンボルトペンギンが、卵からどのように成鳥になっていくのかを紹介します。

(三宅 正悟)

写真①

① フンボルトペンギンの卵は、鶏卵よりもひとまわりぐらい大きいイメージです。 産卵から、約40日で卵の中の雛(ひな)が卵を内側からコツコツと打つ「嘴打(はしう)ち」が始まり、殻を破って雛が誕生します。 写真では、ちょうど中央に雛(ひな)のくちばしが少し見えています。

写真②

② 生まれたばかりの雛(ひな)の体は少し濡れています。

写真③♀

③ 体はすぐに乾いて、写真のようにふわふわの毛になります。
 この時期の毛は「幼綿羽(ようめんう)」といい、保温性に優れています。この幼綿羽(ようめんう)は、水の中を泳ぎまわるには不便なため、大人になると抜けてしまいます。

 体重は約90gで、目もまだ開いていないですが、「ピィピィ」と親を呼ぶ声を出します。 卵を温めている時から父親と母親は交代で子育てを行います。

写真④♀

④ ペンギンの雛(ひな)のお腹には、羽毛の生えていない筋のような部分が見られます。

 これは「抱卵斑(ほうらんはん)」といい、実は成鳥になった後もあるのですが、普段は周りの羽毛に覆われていて見えません。

 この「抱卵斑(ほうらんはん)」は、羽毛よりも温度の高い皮膚で直接卵を温めるためのもので、ペンギンだけでなく、多くの鳥類がもつ特徴の1つです。

写真⑤♀

⑤ これは、巣の中の様子です。

  孵化後(ふかご)1カ月経ち、雛が少し大きくなり、親のお腹の下からはみ出ていますが、独り立ちはまだまだ先です。

 体重はわずか1カ月で1㎏を超え、だいたい15倍もの重さになります。 ペンギンは、親が食べて消化した魚を吐き戻し、雛に与えて子育てをします。

写真⑥

⑥ この写真で幼綿羽(ようめんう)の抜けている部分を「フリッパー」といいます。

 ペンギンは、鳥の仲間ですが、他の鳥たちとは違い、空を飛ぶことはできません。しかし、その代わりに水中を自在に泳ぐことができるよう、翼の部分が一枚のオールのような形に変化しました。

写真⑦

⑦ 孵化後(ふかご)2カ月でかなり幼綿羽(ようめんう)が抜けてきました。

 体重は約3.5㎏で、大人と同じくらいの大きさです。 このくらいの時期になると、体重の増減はほとんどなくなります。

  孵化後(ふかご)40日以降になると、巣から出てくる様子を確認できるようになります。最初のうちは、巣の出入り口付近にいてすぐに隠れてしまいますが、だんだんと巣から出る時間が伸びていきます。

写真⑧

⑧ 孵化後(ふかご)3カ月近くになると、幼綿羽(ようめんう)も抜け、プールで泳ぐ様子をみられるようになります。初めのうちは、泳いでるというよりただ浮かんでいるような状態ですが、徐々に泳ぎのコツを掴み、大人たちと同じように上手に泳げるようになります。

写真⑨

写真のような成鳥の姿になるのは、孵化(ふか)から1年後の換羽(かんう)の時期です。

それまでの1年間は、胸の黒いラインのない姿で過ごし、この時期のことを「亜成鳥(あせいちょう)」といいます。

 

ページの上部へ