ゾウ担当になって


ゾウ担当になって その1

 皆さんこんにちは。早いもので飼育員になって1年があっと言う間に過ぎ去り、動物園で働くことに喜びを感じるとともに飼育員であることの責任感が日々増す中、先輩たちの指導の下、なんとか2年目をむかえることが出来ました。そして今年になって4月の担当替えで、ゾウ担当になりました。ちなみに前の担当動物は爬虫類でした。手の中にすっぽり収まるヘビの飼育から陸上最大級の哺乳類であるゾウの飼育へと激変したわけです。ゾウ担当が決まった時の気持ちは、不安もありましたが期待感の方が優っていたと思います。

 

 

 そしてゾウ担当1年目。ゾウの飼育方法は大きく分けて直接飼育と間接飼育に分かれるのですが、天王寺動物園では直接飼育を採用しており、ゾウがいる寝室やグラウンドに飼育員が入って、直接ゾウの体に触って健康チェックを行ったりするのですが、新人の私がいきなりゾウの寝室に入って、体を触って世話をすることはできません。長い年月をかけて信頼関係を築きながら少しずつゾウに慣れ、それ以上にこちらがゾウに認めてもらうことが何より大切なのです。

 

 

 現在、天王寺動物園で飼育しているゾウは雌のアジアゾウラニー博子1頭だけになってしまいました。皆さんご存知かも知れませんが、去年の夏に当時日本で2番目に高齢だった雌の春子が推定66歳で亡くなりました。それは私が飼育員1年目で初めての夏を迎えた直後のできごとでした。担当獣医師の応援要請があり急きょゾウ舎へ駆けつけました。するとそこには寝室に横たわる巨体がありました。春子です。横たわる春子は頑張って起き上がろうとし、その手助けのため必死に背中を押す飼育員こそ、現在ゾウ班の主任である西村主任でした。ゾウ舎に駆けつけたのはいいのですが寝室内に入れるのはゾウ担当者だけで、他の飼育員は春子に括り付けたロープを引っ張り、起き上がるのを手助けすることしかできませんでした。とにかく限られたできることを汗だくになりながら必死にやるだけでした。そんな状況の中で衝撃を受けたのは、死を目の当たりにしたゾウがパニックに陥ることもなく担当飼育員を信頼し体に触れること許し、まるで家族が寄り添うような印象を受けたことを今も鮮明に覚えています。

 そして今、実際に目の前でラニー博子に直接触れて毎日の健康管理や治療を行っている先輩方に一日でも早く近づけるように、そして一日ででも早くラニー博子に認めてもらえるように象道を突き進むしかありません!

 

(河合 芳寛)


ゾウ担当になって その2

 今年の4月1日念願の飼育員になり、意気揚々と天王寺動物園の門をくぐりました。そこで言い渡された私の担当動物はアジアゾウでした。それを確認した時は、すごくうれしかったのは、今もしっかりと覚えています。でも、そんな気持ちは束の間でした。早速、先輩の後をついてゾウ舎に向かい、ゾウに対するいろいろな注意点と日常作業の手順を教えてもらいました。一瞬で頭がいっぱいになり、うれしい気持ちが不安に変わった瞬間でした。先輩方と話をしていてもゾウに関してはほとんどが危険な話ばかり、1年間はゾウには触らず観察だけで、しかもその観察だけの期間が1番大事!正直、最初は全然意味が分かりませんでした。

 

 

そうこうしたある日のことです。今までは話ばかりで実際には経験のない私の目の前で、先輩がゾウに近づいたときに鼻を振り回しました。あまりの迫力に足がガクガクになりました。しかもそんな危ない目にあった直後でもゾウのいるグランドに餌を与えるために入って行ったのです。もし自分が先輩と同じ場面に出くわした時に冷静に対処ができるのだろうか?先輩方が普段から言って下さっている観察が大事な理由が分かったような気がしました。

 

 

 私はその日以来、どんな細かなことでもメモをとるようになりました。自分でも意外です。あの瞬間を目にして気持ちが落ち込むかと思いましたが、逆でした。2人の先輩飼育員のようになりたいと、まだゾウ担当2カ月の新米飼育員ですが、1日1日経験を積んで一人前のゾウ担当者とよばれるように頑張っていきたいと思います。

 

(長谷川 真登)