天王寺動物園の野鳥観察


 2016年もはや半年を経過しようとしています。今年に入ってからも沢山の野鳥たちが天王寺動物園を訪れてくれています。知らぬ間に身についた野鳥たち「発見術?」が、通勤経路や園内移動途中でも大いに?発揮されて私個人としては心の中で「ヨッシャー」と喜んでいます。

 昨年からふれあい担当となりましたが、以前からの引き続き担当している動物がいます。それは「チョウゲンボウ」という猛禽(もうきん)類です。チョウゲンボウはハヤブサ目ハヤブサ科に分類される鳥の一種で、漢字では「長元坊」と書きます。名前の由来は諸説ありますが、「お坊さんの名前」やトンボの方言の一つで「ゲンサンボー」という呼び名からきた・・・などがあります。園内で不定期にこのチョウゲンボウを使用して簡単な解説をしていますが、これまでこの解説中に数回ですが野生のチョウゲンボウが頭上を舞ったことがあります。これには私も驚き、はるか上空を舞うチョウゲンボウに見惚れるやら、お客様に必死になって上空を指さして説明するなど大慌て!来園されたお客様と一緒になって「ウワァーーー、ほらあそこ、あそこ!」と歓声をあげてしまいました。普通一般の方々には、はるか上空やアッと言う間に飛び去る野鳥たちを観察する機会はなかなか無いでしょう。ましてやその野鳥の種類を判断するなんてとてもできないでしょうから、貴重な時間を共有できたとも思いますし、はるか上空を飛んでいる鳥が今この手に据えているチョウゲンボウで、間近かに観察できてしまうのでした。まさにジャストタイミングでした。

天王寺動物園で飼育中のチョウゲンボウ

天王寺動物園で飼育中のチョウゲンボウ

 園内で観察できた猛禽(もうきん)類は、ハヤブサ、チョウゲンボウ、オオタカ、トビ、チュウヒ、ミサゴ、ノスリ、ハイタカ、ツミ、フクロウで、中には種名を確認できずに終わってしまった鳥もいます。この未確認の鳥たちが気になって仕方がありませんが、あれは一体何だったのしょうか?(いまさら確認できない、笑)

 園内で猛禽(もうきん)類が観察されるのはおもに冬季がメインで、夏季にはほとんど姿を見ることはありません。これは捕食する餌か、繁殖の関係と思われます。解説中に鳥を発見?と不思議に思われた方はいらっしゃるでしょうか?そうなのです、実は私も解説中に上空をキョロキョロしてばかりではありません。この発見は手に据えているチョウゲンボウがしてくれるのです。ヒトの7~8倍の視力があるといわれている猛禽(もうきん)類ですが、同類には敏感に反応し、上空を見上げるのです。答えは簡単、チョウゲンボウを良く観察し、チョウゲンボウが上空を見上げれば同じようにその方向を見上げればいいのです。時にはその鳥の正体がカラスだったりアオサギだったりツバメだったりもしますが、同じ猛禽(もうきん)類の場合はドキッとします。

アオサギ

アオサギ

 それとチョウゲンボウには見えていても、ヒトには見えない場合もあるでしょう。チョウゲンボウが数m先を飛ぶ小さな虫を見ていたのに、数10m離れたところに目を凝らしても何も見えないのと同じかもしれません。このことは動物園で飼育されている鳥たちにも応用できます。たとえば鳥の楽園内にいる鳥たちです。当園の鳥の楽園内にある大きな池は定期的に清掃を行っていますが、その際に、飼育されている鳥たちがしきりに上空を見上げる時があるのです。何だろう?と見上げるとハヤブサやオオタカだったことがありました。鳥類の頂点に立つ猛禽(もうきん)類を警戒する鳥たちにとって猛禽(もうきん)類の行動は、自分たちの命に直接関わってきますから敏感に反応して当然です。このように、行動を観察して「発見」ができるようになったのは野鳥の観察を長期的に行うことによって得た方法です。鳥の種類は何でも構いませんが、できれば小さな鳥たちがいいでしょう。しかも群れで行動しているものほどいいかもしれません。その鳥たちの種類が決まったら、できるだけ観察時間を連続して取りましょう。いつもの行動を良く観察してください。この「いつも」を知ることがカギとなります。観察となると少し堅苦しい感じがしますが、そんなに力まずじっくりみていればいいのです。すると「いつも」の行動や鳴き声がわかってきます。「いつも」の行動と「いつも」の鳴き声を一致させればいいのです。特に「鳴き声」は重要になってきます。声の聞き分けができると直接その鳥たちを見なくてもよくなります。声だけ聞こえていればいいのですから・・・。たとえばスズメなら「いつも」の鳴き声は「チュン、チュン」と聞こえ、電線や樹木に止まっている姿勢や動き方とかです。両足を揃えてピョンピョンと地上を進みます。この「いつも」がわかればしめたものです。ある日、スズメがやたらに「いつも」と違う鳴き声で「ジュージュジュジュジュ!」とけたたましく鳴き叫んでいる・・・こんな場面に出会ったことはありませんか?良く見てみると、そこには猫がいたりカラスがいたりします。警戒の声を発しているのです、「いつも」とは全く違います。この変化がわかれば後は鳥を変えればいいのです。身近な野鳥、ヒヨドリ、ムクドリ、シジュウカラ、ドバトなどの急な飛び立ち、逆にカラスの鳴き声などなど・・・です。

 

ヒヨドリ

ヒヨドリ

ムクドリ

ムクドリ

 いきなり「モビング」を見ることもあるかもしれません。鳥の種類が変われば「警戒の鳴き声」もそれぞれですから、それを良く覚えておき一致させましょう。聴き慣れてくるとすぐにわかるでしょう。そうすれば以前とは格段に猛禽(もうきん)類を「発見」できる機会が増えることでしょう。肉眼で見づらい時は双眼鏡や望遠鏡、写真を記録するには望遠付きデジタルカメラも必要になってきます。

 いかがでしょうか?今回は動物園内での猛禽(もうきん)類の発見について少し詳しく述べてみましたが、これは何も動物園内だけのものではありません。野山でもどこでも大いに発揮できる「発見術」「観察力」になります。次回がもしあるなら、もっとたくさん動物園内を通過してゆく野鳥たちの紹介をしたいと思っています。バードウォッチングには最適なシーズンですので是非あなたも身近に生息している野生動物「野鳥」を観察してみてはいかがでしょうか。

 

 

(西田 俊広)


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