〜 天王寺動物園発行情報誌 〜
『なきごえ』5月号       

   
 

 アジアゾウの春子は50歳を超すお婆ちゃんです。暑い国の動物なので、大阪の冬は辛いだろうと数年前に獣舎の前にシャッターを設置し、夜の間はシャッターを閉めて寒さをしのいでいます。毎年12月頃から4月頃まで閉めていますが、今年は3月下旬に強い寒の戻りがあり、気温が安定するまでは、様子を見ようという事で4月に入ってからも、しばらくシャッターを閉めていました。するとある暖かい日、春子は突然プールの水を鼻にため自分の体にバシャッとかけるではありませんか。その後も何度もかけるのでホースで水を出してやると、気持ちよさそうに水浴びを楽しみます。
 こちらの心配をよそに春子自身は、もうすでに季節の変化を感じていたのです。昨年には、長年一緒に過ごした一つ年下の百合子に先立たれ、精神的なショックもあり、更には最近右目が白内障になりほとんど見えなくなり、なにかと年を感じていたのですが、この調子ならまだまだ元気でいてくれそうです。ちょっと担当者を安心させるできごとでした。 
                      文・油家 謙二