〜 天王寺動物園発行情報誌 〜
『なきごえ』1月号       

   
      
〜H13年 興味をそそる生きもの 巳(へび)〜

       


<アオダイショウ>
日本列島固有種で、日本で広く分布し、もっとも普通に見られ、私たちの一番身近にいるヘビです。
  
二ある干支には、生まれた干支によって人の性格や個性にちがいがあると昔から言われています。今年、ヘビ「巳」年にあたる人は、「執念深い人が多い」そうで、
私の身のまわりにも数人います。また、何かとヘビは嫌われているようですが、一方では、「神」的な存在でもあります。現に、私が知っているヘビを祭っている神社では、ガンやその他病いを治してくれるそうで毎年大勢の人々が参拝に訪れています。また、農家の人たちには、古家、蔵にある作物を加害するネズミを捕食してくれるアオダイショウを大切にしてきたそうです。
   
             
在のヘビの仲間は、極地を除いた世界中に約2,700種分布しており爬(は)虫類の中でも最も進化の過程で適応し、草原・森・砂漠や地中さらに池沼から海洋まであらゆる環境に
すんでいます。長さも、最大で10mともいわれるアミメニシキヘビから、10cmほどのミミズくらいのヘビまで大小さまざまです。ヘビには足がありませんが、昔、四肢をもっていた時代もありました。現在でも原始的なニシキヘビ・ボア科の仲間には、後肢が退化した痕跡があり2つの小さなけづめのかたちで残っていて、これは、トカゲの一種が非常に特殊化し繁栄したとされています。繁殖期になるとオスはメスに絡みつきこのけづめを使って刺激を与え求愛をおこないます。

<ボールパイソン>
肛門の両側に見られるけづめ 
         
ビには外耳もなく全く聞こえないと考えていいでしょう。そのため、地面から伝わってくる振動を体全体で感じとっています。みなさんも笛を吹いて踊るインドのヘビ使いをご存知と思いますが実は、笛の音でヘビが踊っているのではなく、ヘビ使いが何らかの方法で地面から振動
を与え、それにヘビが反応し動いているのです。ヘビ使いの吹く笛の音でヘビが踊るという迷信を信じている人もまだまだ多いかと思います。ヘビの視力は、他の爬虫類よりも劣っています。目全体が1枚の透明な鱗で覆われているのでまばたきはできません。そして、ほとんどの種類が側頭部に位置しているため、外敵や獲物を発見した場合でも立体的には見えません。動くものには見えますが、止まっているものには通り過ごすこともあるそうです。
         
のように、視力・聴力ともあまりあてにならないヘビの感覚器官の中で、最も頼りになるのが嗅覚です。ヘビは獲物に近づいたり危険を感じたときなどには盛んに舌を出し入れしながら、空気中にある物質を口腔内にあるヤコブソン器官という嗅覚を識別する特殊な器官に送り込み
科学的に分析しています。ヘビの舌は、周囲の環境温度までも感じ取る精密なセンサーの役割を果たしているのです。また、一部のヘビ類は、ピット器官(赤外線感受器官)と呼ばれるくぼみを頭部に持っています。ピット器官は、獲物となる動物、主に恒温動物が発する体温を感受し獲物を捕まえるのに重要な働きをしています。ガラガラヘビやマムシ、ハブなどのマムシ亜科の毒ヘビは、目と鼻孔との間に前方を向いて開口した1対のくぼみをもち、ボア科の一部の種にも、上唇と下唇の鱗にくぼみが並んでいて、わずか0.003℃の温度差までも識別ができ、その位置を知る能力をもっています。このヘビ達は、光や臭いの有無に関係なく獲物の体温を素早く探知し確実に捕まえることができるのです。
         

ボールニシキヘビがマウスを
締めつけて窒息させているところ
飼育下でも給餌の際にこのような行動が見られます。まず、餌(解凍した冷凍マウス)を与えるのにケースの扉を開けると振動が伝わり、知らぬ顔をしているヘビが「ビク
ッ」と頭部を持ち上げ舌を出し入れし反応します。そして、餌を動かしながら徐々に近づけるとさらに頭部を小刻みに動かし舌の出し入れが頻繁になり、「サッ」と一気に飛びかかってマウスに巻きつき締めつけてからゆっくりと飲み込んでいきます。すでに餌のマウスは冷凍もので死んでいますが、本能的に締めつけることをするのでしょう。また、ピット器官をもつボア科のボールニシキヘビは、餌を認識してからはじわじわと近づき、飛びつくまで時間がかかります。そして、おもしろいことに「来た!」と思うとなぜか?よく空振りをします。これについては、ピット器官を頼りすぎて餌が冷凍ものなので、嗅いはあるが熱を感じにくいせいなのか?餌を持つ私の手からの熱を感じてまぎらわしいせいなのか?なぜか変わった行動がみられます。
            
ビの表皮は、2つの層から成りたち外層は硬い角質に変化して身体を保護しています。しかし、この外層が古くなると生きている下層の成長の妨げになるので1〜2カ月に1回程度、
周期的に脱皮をします。脱皮の2〜3週間前には全身の鱗につやがなくなり数日間は、暗い静かな所でじっとしていることが多く餌も食べません。その後、目が澄んでくると数日後には脱皮が始まります。ヘビの体調や飼育環境が良好であれば頭から尾まで1本の抜けがらになりますが、皮がバラバラにむけ落ちているときは体調をくずしています。脱皮後は、動きも活発で食欲も旺盛です。 ヘビ類は、このほか数多くの機能を備えた生きものですが、見た目は「不気味」と思われがZOOの原稿は届いていません。

脱皮前、眼球表面は、始め白く濁って
いますが、脱皮が近くなると今度は
澄んできます。ヘビの眼球表面にも
ウロコがあります。
(ビルマニシキヘビ)