〜 天王寺動物園発行情報誌 〜
『なきごえ』2月号       

                  
      

動物病院では、当園の飼育動物以外に大阪府  から依頼を受けて野鳥救護ドクターとして病気や傷ついた野鳥の治療をしています。保護理由として、翼が骨折して飛べ
なくなり保護されたケースや何らかの理由でエサを採れなくなり衰弱しているところを保護されたケースが多く見られます。大空を自由に飛びまわる野鳥にとって人間は大敵ですから、怪我をしても人間や犬、猫等を警戒して人目につかない場所に隠れていることが多く、保護された時はすでにエサも採れなくなり痩(や)せて衰弱している場合がほとんどです。
護されて来院する野鳥はさまざまで、平成8年から平成11年までの保護記録を見ますと、特定の季節に見られる野鳥、例えば、春から夏にかけてはメジロやヒヨドリ、
ツバメ、キビタキ、秋から冬にはカワラヒワ、ヤマシギ、オオミズナギドリ、ユリカモメ、ホシハジロ等が保護されています。1年を通して来院する者としては、キジバト、ドバト、ゴイサギ、アオサギ、ハシブトガラス、スズメ等がいます。ドバトは最も保護羽数が多く毎年保護される野鳥の3分の1を占めています。珍しい鳥では平成10年にアカオネッタイチョウが保護されてきました。この鳥は日本の最南端の硫黄島付近に生息していますが台風に運ばれて大阪に来たものと思われます。保護されてくる野鳥種と季節の関係として繁殖期や渡りの時期が関係していると思われます。しかし、ドバトやキジバト、ハシブトガラス、スズメは自然界と言うよりも人間界の野鳥ですので季節に関係なく保護されているのが現状です。
 先程述べましたが、保護されるケースとして、特に異常はなく単に飛べなくなって保護される野鳥もいます。オオミズナギドリという鳥で、彼らは日本周辺の島々で繁殖して10月から12月に島を離れて東シナ海や日本の南方海域へ移動します。この鳥は、翼が細長く足が短いため他の鳥のように地上から飛び立つことはできません。翼を広げてバランスをとりながら斜めに伸びた木に登り飛び立ちます。移動中に畑や路上に落ちたため飛ぶことができないところを、発見され保護されるケースがほとんどです。当病院には毎年11月頃に来院します。およそ7日間ほど魚のアジを食べさせた後、大阪府緑の環境整備室に連絡して、自然に帰してもらいます。
 保護されて当園の病院へ来る野鳥の数は年々減少しています。平成8年で49種222羽であったのが平成11年では33種101羽と保護数で半分以下になっています。 
          減少の原因として、開発による繁殖地や渡来地の減少等、野鳥の生息環境が減少したためなのか、人間が野鳥に無関心になったためなのか、原因はさまざま考えられます。今日も野鳥が保護されて来るかもしれません。傷つき衰弱した野鳥を元気な体に戻すために、野鳥保護の担い手として、当動物病院は日々奮闘しています。