ボルネオ紀行

今回のグラフZOOでは、前ページに引き続いて、ボルネオで行った吊り橋の架橋作業の様子を紹介します。場所はサバ州キナバタンガン川の支流・タカラ川中流で、前回設置した第3号吊り橋が豪雨によって破壊されたための再設置です。熱帯雨林気候の中で作業は悪戦苦闘でした。

(撮影・文:竹田 正人)



@看板

アブラヤシの プランテーション

バトゥプティ村の船着場から村人とともに出発

キナバタンガン川の川岸に迫るアブラヤシのプランテーション

 毎朝7時に起床し、朝食後に村の船着場に集合しました。そこから船で約30分かけてキナバタンガン川を下り、支流のタカラ川にある吊り橋設置場所に向かいました。

 マレーシアの法律によると、キナバタンガン川のように川幅の広い川では、川岸から50m、タカラ川のように川幅数十メートルの川でも、川岸から10mは森を残さなければならないことになっていますが、まったく守られてないように見えました。

 

キナバタンガン川の支流、タカラ川

前日までの雨でぬかるむタワー設置現場と 第3号吊り橋の残骸と倒れた木

キナバタンガン川の支流、タカラ川

前日までの雨でぬかるむタワー設置現場と 第3号吊り橋の残骸と倒れた木

サイモン氏考案の鋼管製タワーの設計図

 

サイモン氏考案の鋼管製タワーの設計図
 今回は、消防ホースをつなぐ支柱となる適当な高木がなかったため、サイモン氏が考案した鋼管製のタワーを使っての吊り橋架橋となりました。設置現場は前日までの豪雨で非常にぬかるみ、足場の悪い状態での作業でした。

 

キナバタンガン川の支流、タカラ川

前日までの雨でぬかるむタワー設置現場と 第3号吊り橋の残骸と倒れた木

タカラ川右岸での鋼管製タワーの組み立て作業
樹上から引き上げつつ立たせたタワー

サイモン氏考案の鋼管製タワーの設計図

 

タワーの安定のために掘った足場と敷き詰めたブリアン
 設置の経費と時間を節減するために、タワーはかなり簡素な作りとなりました。それでも相当な重量になったため、タワーを安定させるために4つの足を埋めるべく地中50cmほど穴を掘り、さらにタワーを沈まなくするために穴底にブリアンという木材を敷き詰めました。このブリアンは、川辺の集落・バトゥプティ村の高床式の家々の建材にも使われていて、現地で採取される硬くて腐りにくい木だそうです。

第4号吊橋の本体(消防ホース)

タカラ川左岸の支柱樹木上での消防ホース吊り

第4号吊橋の本体(消防ホース)
タカラ川左岸の支柱樹木上での消防ホース吊り 上げ作業

吊り下げた消防ホース

右岸での消防ホースの本固定

吊り下げた消防ホース
右岸での消防ホースの本固定

タカラ川に渡した消防ホースの第4号吊橋

吊り橋を渡る動物を写す自動撮影装置

タカラ川に渡した消防ホースの第4号吊橋
吊り橋を渡る動物を写す自動撮影装置
 タカラ川の左岸で消防ホースを支柱樹木に吊り上げ、ガイドのロープを右岸のタワーに引っ掛けて引っ張り、右岸奥のがっしりした樹木の根元に固定しました。その後、左岸から消防ホースを引っ張り、ホースに緊張を与え、最後にタワーのてっぺんを横切る物体に反応する自動撮影装置を設置し、合計3日間に渡る第4号橋の設置を終えました。

 

 

 過去、BCTJが実施した3回の吊り橋設置では、第1号橋でオランウータンが渡ったのを確認しています。今回もガイドロープを張った翌日には、早くもカニクイザルが渡っていました。オランウータンがこの第4号橋を渡っている姿が自動撮影装置に映ることを期待しています。

 作業の空いた時間を利用して、第5号吊り橋設置の候補地であるピン川とカボイ川を視察しました。近い将来吊り橋を架けることになると思います。

 今回の「吊り橋プロジェクト」だけでなく、「ボルネオ緑の回廊プロジェクト」や「ボルネオへの恩返しプロジェクト」にも積極的に参画して、多くの自然環境と野生動物を守り続けたいと思っています。