〜 天王寺動物園発行情報誌 〜
『なきごえ』6月号       

   
      
〜これからの飼育係の仕事の一つとして・・・・〜
 飼育課  早川 篤      


物園に来る人は、本当に動物のことを理解しようとは、思っていないのではないのでしょうか?コアラ舎ではユーカリを食べては眠ってばかりいる、コアラを見て「いーなあ、ああいう生活。」とか「食っちゃ寝てばかりで、うらやましいな。」とかの話しか聞きません。そういう話を聞くにつけ、動物園では何のためにコアラを飼っているんだろうと考え込んでしまいます。動物園の社会的役割とか、環境学習の場とかいう言葉はよく耳にします。でも現在の展示を見ている限り、ひと工夫もふた工夫も必要であると感じます。







誤解を受けている?コアラ


アラ=かわいい・楽して生きているという図式を、見る人に与えるばかりです。野生動物の不思議さ奥深さ力強さなど、かけらも伝えることなどできていません。もちろんパネル展示はあるのですが、読まれていないのが現状です。これはコアラに限らず動物園の、展示の限界なのではないでしょうか。展示だけ(パネルも含めて)で伝えることができる内容なんて、動物学的な要素では、形態以外ありません。伝わっていると考えられているのは、見ている人が前から知っている知識です。



従来からあるパネル


からその知識が間違っていても、自分たちで、正しいものとして再認識している会話をよく耳にします。何かを伝えるというのは、パネルが読まれない展示では、無理と考えたほうがいいというのが僕の考えです。



               



最近では工夫をしていますが・・・


しい動物学に関する知識を興味深く知っていただくためには、飼育係りは何をすればよいのでしょうか?自分が疑問をもって勉強して得た知識を、入園者の方に伝えていく事。その方法を楽しく興味深いものにする工夫が何よりも重要です。いくら話をしても人間は、自分の興味がない内容に関しては、長期にわたって記憶されないようです。より印象的にそして理解しやすい研究発表の技術を身に付けるのも、これからの飼育係りには、大切な仕事であると考えています。その一つの試みとして草食動物の「ウンチ」から紙を作ってみました。詳細はグラフで発表していますから見て下さいね。




右からゾウ・キリンの糞で作った紙