ホッキョクグマ、 ゴーゴとバフィンの4年間を振り返って

ホッキョクグマ、 ゴーゴとバフィンの4年間を振り返って


 2011年3月に国内のホッキョクグマ繁殖プロジェクトに従い、浜松市動物園から雌のバフィンが来園しました。目的は、もちろん雄のゴーゴとのペアリングし、繁殖させることが目的です。1年目は、ゴーゴは興奮するものの、繁殖行動には至りませんでした。当時ゴーゴは6歳、まだ幼さが残っているようでした。私自身も飼育員1年目でホッキョクグマ飼育に関して経験不足でした。

 

写真①

 

 この年に北海道の札幌市円山動物園にて国内のホッキョクグマ飼育園館が集まる繁殖検討委員会拡大会議(現在は、生物多様性委員会ホッキョクグマ計画推進会議)が初めて開催され、私も参加しました。今年で第5回になります。今となれば、ホッキョクグマ飼育素人の私が各園館の情報を得ることができる会議が発足したのも幸運でした。担当者同士の会話には共通点も沢山あり、文献では知ることが出来ない感覚的な部分も学び2年目を迎えました。

 

写真②

 

 2年目も残念ながら繁殖行動には至りませんでしたが、悲観するものではなく、ゴーゴの成長を感じました。このペアに期待が膨らみました。そして3年目、初めて繁殖行動を確認しました。今でも鮮明に覚えています。私は休みで体調を悪く、寝ていると担当獣医師から携帯電話にメールが入りました。そのメールには、何とゴーゴバフィンの交尾画像が添付されていました。ついにゴーゴがやってくれた!と、うれしくて興奮したのを覚えています。

 

写真③

 

 この年は、交尾も確認したので今まで学んだことを生かしつつ、バフィン仕様に変えて出産準備をしました。バフィンは餌(えさ)を食べなくなり、産室に滞在する時間が増えたので、出産すると信じていましたが、残念ながら出産しませんでした。ただし、この出産準備の経験が4年目につながったと思います。反省点を改善し、バフィンも初めての長期間寝室、産室に閉じ込めだったので良い練習になりました。

 

写真④

 

 そして、ゴーゴバフィン、私も繁殖に向けて経験を積んだ4年目、これまでの経験が実って11月25日に待望の赤ちゃんが誕生しました。当園では16年ぶりのできごとです。過去3度出産したものの育児に至らなかったバフィンが育児をしてくれています。この日を迎えることができたのは、園の同僚の皆さんの理解と協力、お客様のご理解、ご協力があってこそだと思います。ホッキョクグマの繁殖は、担当者だけが頑張っても成功しません。組織で挑戦しないと実現しないと思います。イベント中止、工事中止など沢山のご迷惑をおかけしました。ご協力いただいた皆さん、本当にありがとうございました。出産にあたり沢山のご教示いただいた男鹿水族館GAOの皆様、札幌市円山動物園の皆様、誠にありがとうございました。国内のホッキョクグマ繁殖成功率は20%に満たないのですが、成功率はどんどん上がっていくと思います。少しでも、それに貢献できるようにゴーゴとバフィンの記録を残し、情報を共有していきたいと思っています。

 ゴーゴバフィンの物語はバフィンの年齢を考えると、今回が最後だと思います。長いようで短い4年間でした。

 

(下村 幸治)