天王寺動物園は、東京都恩賜上野動物園、京都市動物園に次いで日本で3番目に長い歴史がある動物園で、2015年1月1日で開園100周年を迎えます。この100年もの長い間にたくさんの動物の命が誕生したり、逆に尊い命を失ったりと様々な出会いや別れがありました。その間絶え間なく必要だった動物たちの飼料を確保するためのそれぞれの時代の担当者が苦労を重ねてきたことでしょう。 さて、現在、天王寺動物園では約200種900点の動物たちを展示飼育しています。それらの動物たちは多種多様で飼料管理は、大変なことです。飼料の発注・搬入・検品・管理・分配・調理など毎日、大変なのはご想像いただけるでしょう。牛肉・鳥肉・マウス・ヒヨコなどを食べる肉食動物、青草・干草・樫の葉・野菜などを食べる草食動物の他、魚だけ食べるペンギンやアシカ、ドジョウを食べるツル、果物が大好きなサルやチンパンジー、ユーカリの葉しか食べないコアラ、その他、コオロギ、ミルワームなどの昆虫を食べる小動物など様々であります。そんな動物たちの台所事情を少しお話しましょう。 そこで動物園の飼料倉庫(調理場)には毎朝、担当動物の餌(えさ)を作る飼育係の他に、肉屋、魚屋、果物屋、パン屋、八百屋などの飼料の納入業者で賑わっています。飼料担当の仕事は、納品された飼料の種類や数量、腐ったり傷んだりしていないかを納品時にチェックすることは欠かせません。

納品された野菜や果物を検品する筆者
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もしリンゴ1個でもが腐っていれば交換してもらうぐらいチェックは厳しく行っています。何故なら動物達は大阪市民の大切な財産であって、宝でもあるので私達が食べる物と同等、いやそれ以上の物を食べさせてやらねばなりません。

動物ごとに飼料を分配する筆者
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それでは皆さん、天王寺動物園で一番の食いしん坊の動物は何かおわかりでしょうか?・・・そうなんです、ゾウです。アジアゾウは1日1頭約70kg~80kgも食べるのです。値段にして1日1頭あたり8,000円ぐらいでしょうか。体が大きいので、それぐらい食べないと体力が維持できません。クロサイやカバやホッキョクグマなども飼料費も高額な部類に入ります。

青草を食べるアジアゾウのラニー博子
また、コアラの飼料のユーカリだけは市場で売っていないので、委託栽培しています。近郊では大阪府下の和泉市、河南町や和歌山で、遠方では岡山、鹿児島、沖縄などで栽培してもらっています。各産地から飛行機やフェリー、トラックなどで運んできてもらっています。

ユーカリとコアラのクミ
このようにして天王寺動物園に到着した飼料の数々を動物たちが喜んで美味しそうに食べている姿をご覧いただける時間帯があります。草食動物は開園と同時に入園されると朝食の青草を食べている姿をご覧になれます。1日20時間近く寝たりじっとしているコアラも毎日、午後1時30分からのごはんタイムにはユーカリを入れ替えるので、新鮮なユーカリを食べるために動く姿をご覧になれます。午後2時30分にはホッキョクグマが生きたコイを泳いで捕まえて食べる姿など、おやつタイムやごはんタイムを各担当者が案内板を出して行っていますので、ぜひ、動物達の餌(えさ)の食べ方(上品か?ガツガツか?)や表情(無表情?喜んでいる顔?)、食べる時の性格(好きなものから食べる?好きなものは後回し?)など、見ていると楽しいし、意外な発見をすることもあると思いますよ。
(村田 行雄)
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