動物の赤ちゃんってすごい!

 みなさん、動物の赤ちゃんは好きですか?かわいい赤ちゃんはほとんどの方が大好きな、動物園の目玉中の目玉だと思いますが、かわいいだけではない動物の赤ちゃんのすごいところをご紹介したいと思います。
 哺乳類であれば赤ちゃんはミルクを飲みます。ヒトの場合はお母さんが赤ちゃんを誘導することが多いですが、動物の赤ちゃんはどのようにミルクを飲んでいるのでしょう?
シマウマなどの草食動物の赤ちゃんは、生まれて3時間ほどで立つことができます。ヒトの赤ちゃんが生後半年以上たってようやくハイハイできるのと比べると、非常に早いことが分かります。もちろん自分でお母さんの乳首を探してミルクを飲むことができます。

グラントシマウマの親子

グラントシマウマの親子


 ネコなどの肉食動物は草食動物と比べると未熟な状態で生まれてきます。生まれてから数週間は目も開いていないですが、ミルクのにおいだけで乳首を探し当てることができます。しかも、いくつかある乳首のうち、自分用の乳首が決まっていて、いつも自分用の乳首を探し当てミルクを飲んでいます。

 カンガルーやコアラといった有袋類の動物は、さらに未熟な状態で生まれてきます。というのも、有袋類の動物はおなかの中で子どもを大きく育てることができません。そのかわりにおなかの袋の中で子育てをします。赤ちゃんが生まれるときは、目は開いていませんし、毛も生えていません。しかも大きさは小指の先っぽぐらいの超超未熟児の状態です。そんな超超未熟児でも、お母さんのおなかから出てきて、袋の中に入るまで、自力でお母さんの体を登っていきます。そして袋の中にある乳首に吸い付き、大きく成長していきます。

 哺乳類の赤ちゃんは自分だけでは生きていけないので、親などに守ってもらう必要がありますが、そこで発揮される赤ちゃんの能力があります。赤ちゃんと親とでは毛の色に違いがある動物がいます。たとえば、天王寺動物園で飼育しているブラッザグエノン。両親は白く立派な口ひげと、灰色の体毛が特徴的ですが、赤ちゃんの頃は茶色から金色の明るい色の体毛を持っています。毛の色が違うのは、まだ子供ですよというサインなので、この時期の赤ちゃんはいたずらをしても大目に見てもらえます。それどころか、「まだ自分だけでは生きていけない」という信号を送り、おとなの仲間たちに守ってもらうよう仕向けているのです。動物の赤ちゃん、恐るべし。

ブラッザグエノンの親子

ブラッザグエノンの親子


 中にはヒトの目から見ると残酷な赤ちゃんもいます。カッコウに代表される、托卵をする鳥です。托卵とは、ほかの種類の鳥(仮親)の巣に卵を産んで、生まれたヒナを仮親に育てさせるという行動です。カッコウの場合はモズやホオジロといった鳥の巣に托卵します。托卵された巣には仮親の卵も産卵されているのですが、多くの場合、カッコウのほうが先にふ化します。そして先にふ化したカッコウは仮親の産んだほかの卵を押し出して、巣から落としてしまいます。そうして一羽だけ残ったカッコウのヒナは、仮親より体が大きくなっても仮親から食べ物をもらい続けます。一見すると残酷なようですが、生き残っていくためにそれぞれの動物たちが獲得してきた能力のたまものです。

 春から夏の時期にかけて、多くの動物が産卵、出産、子育てをしています。かわいいだけではない、動物の赤ちゃんの魅力をぜひ探してみてください。

 

(越智 翔一)