在来馬野間馬

飼育員になって


 今年の4月に下水処理場から異動して来ました、河合芳寛と申します。よろしくお願いします。今まで飼育と無縁の仕事をしてきた私にとってすべてが初めて経験することばかりで発見の多い日々をおくっています。

 私が配属されたのは爬虫類生態館(アイファー)です。その中で北米の温帯湿地ゾーン、日本の自然ゾーンを主に担当しております。“アイファー”はアルファベット表記にすると「IFAR」となり、その意味は、無脊椎(せきつい)動物『Invertebrates』・魚類『Fishes』・両生類『Amphibians』・爬虫類(はちゅうるい)『Reptiles』のそれぞれの頭文字を進化の順に並べたもので、これらを複合展示しています。

 

日本の自然の水槽清掃

日本の自然の水槽清掃

 

 アイファー入口を進んですぐ右手に、大きな倒木と水面や地中から突き出した気根が印象的な北米ゾーンがあり、その展示場には体長約2mのミシシッピーワニを2頭飼育しているのですが、長さが1mほどのハサミのような道具を使い直接ワニの口へ給餌(きゅうじ)する作業が何より1番緊張する作業です。ミシシッピーワニは他の雄が自分の縄張りに入ってきたときに警告としてうなり声を上げることがあり、私が給餌(きゅうじ)のために展示場内に入ると地面が揺れんばかりのうなり声を出します。彼らには声帯がついていないので人間のような方法で声を出すことはできないのですが、直接肺に空気を吸い込む時にこのようなうなり声を出しているといわれており、警告の他に求愛の時にもそのような声を出すようです。私に求愛しているとは全く思いませんが。そのうなり声に圧倒されながらの給餌(きゅうじ)作業ですが、1頭に給餌(きゅうじ)しながら他の1頭の動きを常に把握しておく必要があり、慣れるにはまだまだ時間がかかりそうです。

 

ミシシッピーワニ

ミシシッピーワニ

 

 北米ゾーンには他にもワニガメ、ミシシッピアカミミガメ、キバラガメ、ニセチズガメ、リバークーター、カリフォルニアキングヘビ、アメリカハコガメなどを展示しています。そして現在展示していませんがアカダイショウ(コーンスネーク)というヘビをバックヤードで7匹飼育しています。ここで皆さん、『脱皮不全』ってご存知でしょうか?ヘビは古くなった皮膚を脱ぎ捨てる“脱皮”をしますが、何らかの原因で正常に行われない時があります。その時の状態を『脱皮不全』といいます。飼育環境が乾燥しすぎていたり、脱皮するときに脱皮殻を引っ掛けるものがない、栄養不足、個体の老齢など原因はいろいろ考えられます。尻尾が『脱皮不全』に陥った場合そのまま放置しておくと、その部分が壊死してしまいます。そんな時はぬるま湯にヘビを入れて皮をふやかして脱皮を促してやる必要があります。こういった作業を何度か行い思ったことは、観察眼を養い、動物たちにとって常にベストの環境を作ること。これが今、私が思う飼育員としての在り方です。

 最後に、歴史ある大阪市天王寺動物園が来年の2015年1月1日に100周年を迎えます。この100周年を飼育員の一員として迎えることができ大変誇らしく思っています。そして次の100年へ向けて終わらない勉強を続け、飼育のプロフェッショナルを目指してこれから精進してまいりますのでよろしくお願いいたします。

(河合 芳寛)