在来馬野間馬

獣医師になって


 みなさま、はじめまして。今年の春に大阪市に採用され、天王寺動物園に配属された獣医師の恒川と申します。皆さんは、獣医師というとどんなイメージを持っていますか?動物のことなら何でも知っていて、どんな動物のどんな病気でも治せると思っておられる方が多いのではないでしょうか。しかし、獣医師になるための大学では、家畜やペット以外の動物についてはほとんど教えてくれません。また、教科書に出ていない病気はたくさんありますし、教科書に出ている病気なのに教科書に書いてある通りに治療しても治らないこともあります。獣医師になり、実際に働きはじめてからも勉強、勉強の毎日です。

 さて、4月から天王寺動物園で働き始めた私ですが、お客さんにとっては制服を着ていれば誰でも「動物園のことなら何でも知っている人」です。よく呼び止められ、「ゾウはどこですか。」「ここにいるオオカミはなんという種類ですか。」など、いろいろなことをきかれます。お客さんに間違ったことを教えないように、園内の地図と動物たちのごはんの時間など、こまごましたことをメモした閻魔帳をいつも持ち歩いています。動物園に来てから1カ月がたち、だいぶ慣れてはきましたが、「ここからベビーカーを押して行ける一番近いトイレは?」など、まだまだうろたえてしまうことが少なくありません。来園者の皆様に最上のおもてなしができるよう、きめ細かいご案内ができるように頑張りたいと思います。

 しかし、時には知っていてもわざと親切に答えないことがあります。この前は、小学生の男の子に呼び止められ、「カバは何の仲間ですか?」と質問されました。どうやら校外学習らしく、手にはプリントを持っています。私に気付いた他の子たちも「僕も教えて、これの答えは何?」と次々にプリントを差し出してきました。私は心を鬼にして、教えませんでした。「自分で答えを探してみ。」

 動物園のあちこちに、飼育している動物の分類や生態など、いろいろな解説を書いた看板があります。また動物をよく観察すれば、他の動物と似ている所、違う所などが見えてきて、あの動物の仲間じゃないかな、と想像できるかもしれません。図鑑などで調べても、きっとおもしろい発見があるでしょう。自分で考えずに正解をすぐに聞いてしまったら、その答えしか知ることができません。

 

カバの説明看板

カバの説明看板

 

もちろん、動物園で動物を見て、不思議に思ったこと、もっと知りたいと思ったことがあれば、どんどん質問して下さい。私も「動物のことなら何でも知っている」わけではありませんが、一緒に精いっぱい考えて疑問を解決するお手伝いをしたいと思います。

 

(恒川 優子)