日本動物園水族館協会 動物園教育事業参加型研修会について


 

 2014年2月27日、28日に、日本動物園水族館協会主催の「動物園・教育事業参加型研修会」が天王寺動物園内レクチャールームで開催され、北海道から沖縄まで、日本各地の動物園水族館34園館から38名の参加がありました。この研修会では小中学校の理科の授業で動物園を活用しもらうための学習指導要領に基づいた教材作成を行いました。

  27日の13時の開会あいさつから研修会が始まりました。開会前に偶然にも同日に来園されていた、動物物まねで有名な江戸家小猫さんからも一芸の披露とごあいさつをいただきました。引き続き大阪府教育センターの広瀬祐司先生から、学習指導要領の解説と教材作成の要点について講演していただきました。

 その後、筆者が園内で飼育している動物を簡単に紹介し、6つの班に分かれた参加者たちが、それぞれに与えられたテーマに沿って教材作成を開始しました。テーマは「動物の仲間(脊椎動物の仲間)」、「生物と環境(食べ物による生物の関係)(自然環境の調査と環境保全)」「人と動物のからだのつくりと運動」「人と動物のからだのつくりとはたらき」「動物の子育て」「動物の出身地」の中からくじ引きで決定しました。初日はほぼ各班の方向性の決定と教材作成のための資料、写真収集に費やされました。初日の最後に、各班に教材のコンセプトを発表し、広瀬先生からの講評をいただきました。とある班の、飼育員になったつもりで動物のからだのつくりから飼育方法を考えてみるという手法は素晴らしく、会場のだれもが感心していました。一方で指導要領に沿わないコンセプトを打ち出した班は再考を余儀なくされてしまいました。
参加者にアドバイスする広瀬先生(撮影:外平友佳里)

参加者にアドバイスする広瀬先生(撮影:外平友佳里)

 

 2日目は本格的な教材作成に取り掛かりました。学校教育の現場で働いている教師の方4名をアドバイザーとしてお招きして、教育現場の立場から意見をいただきました。

 初日(と意見交換会)で固まってきたアイデアを各班が形にしていき、生物の多様性をどう伝えたらよいか、動物のウンチの形、中身を見せてはどうか、身近な動物について知ってもらいたい、といった各班それぞれのテーマにそった熱い思いでレクチャールームの室温が上がりました(体感ですが・・・)。

 

教材作成のようす

教材作成のようす


 教材作成が終了したところで、各班から完成した教材のプレゼンテーションを行いました。各班の代表者が先生役になり、教育の現場で使用すると見立てた発表は、和気あいあいと進んでいきました。中でも生態系や食物連鎖をわかりやすく説明するために、植物や動物の絵を描いた紙コップをピラミッド状に積んで表現するという方法は素晴らしい発想だと感じました。ひとつでも紙コップが抜けるとバランスが崩れ、積んだ紙コップがすべて倒れてしまいます。生態系はたくさんの生物から成り立っており、一つの生物が減少してしまうと生態系全体のバランスが崩れてしまうということが見た目にもわかりやすく表現されていました。

 

愛(右)とレイ

生態系ピラミッド

 

 アドバイザーからは、どの教材もすぐに教育現場で使えると言っていただきましたが、子どもにはわかりづらい表現があるとか、写真に写っている動物の名前を書いてほしいといった意見もありました。

完成した教材のプレゼンテーション

完成した教材のプレゼンテーション

 

 開催園館の私たちはもちろん、アドバイザーの先生方も予想していなかった完成度の高い教材ができ、非常に有意義な研修となりました。この教材が、持ち帰った各園館から全国の先生の手に渡り、子どもたちの心に驚きや感動、動物への興味が生まれることを期待しています。 

(越智 翔一)