小林 和彦さん

 ヤンバルクイナは1981年に発見された沖縄県北部のやんばる固有種で、世界でも珍しい新種の鳥として親しまれてきました。発見以降、個体数は激減し、一時期は絶滅の危機に瀕(ひん)しながらも、地域・専門家・行政一体となった「ヤンバルクイナの保護増殖事業」の取り組みで個体数の回復を見せ、2013年9月の展示施設の開館に漕(こ)ぎ着けました。
 私自身は埼玉出身、幼少期は昆虫採集に明け暮れ、近くに東武動物公園があったり、動物に触れあう機会には比較的恵まれていましたが、当時から動物への愛情や関心は高くなかったように思います。20歳を過ぎた頃から国際ボランティア活動や地域活動にのめり込み始めた私にとって、犬猫鳥等の愛玩(あいがん)動物は世話をしなければならない存在で、両親が旅行等で不在の場合に餌(えさ)やりや散歩する程度で、特に愛着を抱くこともありませんでした。
 こんな私が「ヤンバルクイナ生態展示学習施設」の企画管理運営を任されるに至ったのには、やんばる地域の振興=自然環境資源の保全×ツーリズム・着地型観光振興、という図式で考えるとわかりやすいと思います。
 沖縄県は2030年を見据えた「21世紀ビジョン」の中で観光立県を標榜(ひょうぼう)しています。その中で、沖縄県北部の生態系を維持保全しながら、どのような形で観光振興・地域振興を進めてゆくか、世界自然遺産の登録とその後について、は非常に大きな命題となっています。そのエコツーリズム推進の調整役、進行役、交渉役として、国頭村(くにがみそん)、安田区に迎えていただきました。

「ヤンバルクイナ生態展示学習施設」を通して、少しでも多くの皆さんに、人間も含めたやんばる希少種の現状を知ってもらい、興味・関心を持ってもらい、実際に来て見てもらって、将来を考えてもらう、そんな機会を提供できれば、と日々取り組んでいるところです。

 

(こばやし かずひこ)