コアラを担当して

コアラを担当して


 コアラを担当して8年目になりますが、最近、コアラの担当になった同僚を見ていると、私が担当になったころを懐かしく思いだします。コアラの飼育はユーカリの種類をまず覚えることから始まります。好みではないユーカリを与えても食べてくれませんので、各個体がどの種類のどのタイプのユーカリを好きなのか見分け、与えることが大切です。

コアラの個体ごとに分けたユーカリ
コアラの個体ごとに分けたユーカリ

 大阪府下2カ所と和歌山、岡山、鹿児島、沖縄の6カ所でユーカリを委託栽培しているほか、非常用に大阪市内の南港にも植えています。

南港中央公園のユーカリ
南港中央公園のユーカリ

 

 同じ種類のユーカリでも栽培する地域で、コアラごとに好みが異なります。季節や体調によっても好みが変わりますので、長い間、担当していても食べるか、食べないかの見極めができない時もあります。しかし、そこがおもしろいところでもあるのです。毎日の仕事を単調にこなすだけでなく、コアラの食べるユーカリを見極めてやるのが重要な仕事です。

ミク(雄)
ミク(雄)

 

 ここまでで書くと、何か難しそうに聞こえますが、実は簡単な面もあるのです。他の動物では栄養のバランスを考えていろいろなエサを与えることが大切ですが、コアラでは、数百のバリエーションがあるユーカリをバランス良く与えてやる必要はありません。食べさえすれば1種類のユーカリでも生きていけます。ユーカリは、ほぼ水と繊維からできていて栄養価が低いのですが、飼育下では20年以上生きるものもいます。不思議で仕方ありません。ユーカリを食べさせることに集中する場合が多いので、勢い良く食べるコアラの姿を見ると安心しますし、嬉しくなります。

クミ(雌)
クミ(雌)
アルン(雄)
アルン(雄)

 

 コアラはほとんどの時間を樹上で過ごすので、しっかりと木につかまれる爪を維持してやることも大切です。ストレスを与えず爪(つめ)の手入れしてやることは担当者の腕にかかっています。普段からのスキンシップも必要です。年齢に応じて止まり木の組み方も考えることも必要です。高齢のコアラは落下のする可能性があるので、止まり木の位置を低くしたり、動いた時に安定するように太めの木を使用したりします。

高齢のコアラのために低くした止まり木
高齢のコアラのために低くした止まり木

 

 逆に若いコアラの場合はジャンプできる距離を計算して木を組んだりします。

 省エネで動きの少ない動物ですが、魅力いっぱいの動物です。間違いなく私はコアラの魅力の中毒者です。

 

(本田 創造)