小田 隆さん

  私はすでにこの世にはいない動物を描いています。こう書くと死んでしまった動物を描いているように思われるかもしれませんが、もう誰もが見ることのできない、絶滅した動物を復元という手法を使って絵を描く仕事をしています。

 絶滅してしまった動物がなぜ地球上にいたことが分かるかというと、化石としてその痕跡が残されているからです。でも多くの場合、完全な状態で全身の骨格の化石が見つかるわけではありません。足らない部分、見つからない部分を補いながら、その動物の全体像に迫っていきます。この復元作業の過程で大切なのは、必ず研究者と共同で作業を進めることです。怪獣やモンスターを想像で描くわけではないので、自由な発想で描くことはできません。スケッチを元に何度も何度もやりとりを繰り返していきます。

 絶滅した種であっても、その特徴は現生種に受け継がれていることがあります。復元は化石の観察から始めることが基本ですが、現生種を観察することを怠ってはいけません。また、その内部構造を知ること、生態を知ることは、絶滅種をより深く理解することに繋がります。そのため解剖学は復元にとって欠かせない分野であり、動物の解体や解剖を経験することは、動物の機能を理解する上で大切なことです。その中でも”骨”を理解することが、絶滅種の復元にとって最も重要です。というのも多くの場合、化石として残るのは骨の部分だからです。

 そんな興味から動物や人間の頭骨や骨格を描く作品を、復元画とは違ったスタイルで制作しています。復元画であっても、現代美術の作品であっても、私にとって動物は常に豊かなインスピレーションを与え続けてくれる存在です。芸術と科学がもっと密接に繋がること、美術大学と博物館などがもっと連携をとっていけること、そんなことも考えながら日々制作し、大学教員という仕事もしています。

(おだ たかし)