日本動物園水族館両生類爬虫類会議に参加して


 今回は天王寺動物園の動物たちから少し離れた話題をお送りしたいと思います。
私は現在爬虫類生態館アイファーを主に担当しています。少し前の話しになりますが、爬虫類や両生類を担当している他園の方々と情報のやり取りや研究成果を報告する、「日本動物園水族館両生類爬虫類会議」に先日参加してきました。この会議は、例えば繁殖に成功した事例のノウハウ、病気にかかった動物の治療方法、飼育動物の餌についてだったりと様々な発表がされ、ここでは何も動物園内のことに限らず、フィールド調査などの報告も行われ、両生類・爬虫類に関することについて非常に多岐にわたって話し合われます。今回は私と担当獣医の2名で広島県にある広島市安佐動物公園へ行ってきました。22の園館から計45名が出席をし、2日間で13の発表がありました。

会議の様子

会議の様子

 私は、日頃他園の方々との交流の機会は少ないので、こういった場はとても勉強になりますし、自分の飼育方法のヒントにもなり得るのです。動物飼育というものは基本的なことはあるにせよ、こうすれば必ず繁殖が成功するだとか、この飼育方法をすれば長生きするだとかといったようなものは同じ種の動物でも個体が異なれば決して当てはまるものではないと思います。ですから、繁殖1つを挙げても各園館で方法も様々で、なるほど、こういうやり方もあるのかと感心させられたり、知らなかった、是非参考に試してみようと思わせられたりと飼育技術の引き出しが増えている気がします。

 会議の開催園である広島市安佐動物公園は国の特別天然記念物であるオオサンショウウオの繁殖にも継続して成功を収めています。それだけでは終わらず生息域の保全にも力を入れていて、会議が終わる2日目の午後からは、その生息地へ行き、現状を見学することができました。そこで驚いたのはその地域に住んでおられる住民の方の協力が非常に大きいということです。

案内していただいた住民の方々

案内していただいた住民の方々

野生のオオサンショウウオ

野生のオオサンショウウオ

 動物園の社会的役割の1つに「種の保存」がありますが、これを動物が生息するいわゆる「生息域内保全」を動物園独自で行うには限界があります。それには地元住民の方の理解も必要でしょうし、我々動物園関係者と市民の方との「市民協働」は非常に大切であると痛感させられました。

人工巣穴で繁殖しているオオサンショウウオの親(右上の尾)と幼生(左下)

人工巣穴で繁殖しているオオサンショウウオの親
(右上の尾)と幼生(左下)

 自然破壊、環境問題など、教育の場やマスコミを通じてよく耳にはします。私も時折、動物園でそういった話しを行事や企画の中ですることはありますが、やはり直接現地へ行き、自分の目でそれを確かめることで強く脳裏に焼き付けることもできるのではと思います。今回の会議では私自身新鮮な体験もでき、非常に有意義なものとなりました。

現地にあった普及啓発看板

現地にあった普及啓発看板