2010年3月8日、当園のフタコブラクダの雄ジャックと雌コニーの間に雌の赤ちゃんが生れました。赤ちゃんが生れたその1週間は、真冬並みの寒さで、みぞれまじりの冷たい雨が降っていました。異常な寒さに、僕たち飼育員はかなり心配しましたが、ラクダファンの方々も心配して見に来てくれていました。
この試練を無事に乗り越えてくれたこの赤ちゃんは、その後すくすくと育ち、僕たちが飼育展示場に入ると喜んでバタバタと走り出したり、顔を引っ付けるようにじゃれて来たり、母親のコニーのコブの間を乗り越えようとしたり、見ているだけで笑顔にしてくれることから、英語のLaughにかけて、「ラフ」と名付けました。
父親のジャックは広島市安佐動物公園から、母親のコニーは秋田市大森山動物園から繁殖目的で借り受けた個体でしたので、このラフの嫁ぎ先を、安佐と大森山と当園とで相談して決めようとしていた矢先の今年の5月に、仙台市八木山動物公園から声がかかりました。八木山は3月11日に起きた東日本大震災で大きな被害を受けていました。八木山には年老いたフタコブラクダの雌がいますが、そろそろ世代交代を考えていたところに、当園の赤ちゃん誕生の情報が入り、震災からから立ち直る意味でも新たな命を受け入れたいとの思いがあったようです。
安佐と大森山と当園で相談した結果、満場一致で八木山に贈ることになりました。引っ越しの時期は、八木山が落ち着く秋頃とし、最終的に10月24日に出園することになりました。9月20日にはラフを輸送するための檻が運び込み、その日から引っ越しの準備を始めました。
輸送箱の扉を開けておいて、ラフが自由に出入りできるように設置しました。ラフは、飼育展示場の横に置かれた輸送檻を見て、最初は警戒と興味の間で心が揺れているように見えました。しかし、輸送箱に餌(エサ)

写真1:ラフの餌
を入れると、興味が強くなったのか、自ら輸送箱に入り、徐々に中で落ち着き餌(エサ)を食べるようになりました。

練習中のラフ
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そんな練習を1ヶ月ほど続け、いよいよ引っ越しの当日を迎えました。
いつもどおりの手順で飼育作業を行い、順調にラフを輸送檻に入れようとしましたが、何かを察したのか、母親のコニーが輸送箱に入ろうとするラフのおしりを咬んで邪魔をしました。

邪魔をするコニー
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翌日の朝には八木山に着くために、この日の夕方には当園を出発する予定でしたので、最後は動物園のスタッフ総出で、コニーからラフを引き離し、無事に輸送檻に入れて送り出しました。翌日、八木山からラフ安着の連絡をいただきました。娘のラフが出た日から数日間、コニーの悲しそうな鳴き声がヒツジ広場に響いていました。親子の愛情を感じました。
ラフには、1年半の短い間ではあったけど、たくさんの思い出をもらいました。「ラフ、ありがとう!八木山でも、その名のとおり、笑顔をふりまいてや!」といいたいです。最後に、ラフを見に来ていただいたラクダファンの方々にも感謝しています。ありがとうございました。
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