林 美正さん

 私は、水辺の生き物と環境を調べ、多様な生き物が棲む場所を孫やその子どもたちに残すことを目指しているボランテイアグループの一員です。十年来、大阪の淀川水系など身近な水辺で、淡水魚のシンボル的存在であるメダカや水辺が繁殖に不可欠なカエルやカメなどの生き物の生息状況を継続的に調査しています。その活動を通じ、私たちの原風景ともいえる豊かな生態系であった田んぼや小川など水辺が人間の都合で改変され、生き物が繁殖できなくなっている実態や、日本固有の生き物たちがブラックバスなどの外来生物に追い詰められている現実を見てきました。そこで、今気になっていることをお話します。

 まずは、大阪府の農地の7割を占める田んぼと生き物の関係です。かつての田んぼには、淡水魚、昆虫、甲殻類、両生爬虫類などが入り、それらを餌にする鳥も飛来し豊かな生態系を構成していました。ところが今の田んぼは、ほ場整備や用水路のパイプライン化による乾田化と農水路のコンクリート化などの影響を受けて、生き物たちが田んぼに入りにくくなっていることです。根本的には、田んぼと農水路を生き物が移動しやすい構造に変えたり、冬でも水の枯れない水溜りを作ったりすることが必要ですが、せめて、冬の田んぼや休耕田に水を入れて、水生生物の繁殖の手助けをすることは容易にできると思いました。

 次に、外来生物です。私たちの調査でも、ブラックバス、ブルーギル、ウシガエルなど多くの外来生物の繁殖を確認しています。それらの内、特にミシシッピアカミミガメの例を挙げておきます。このカメは1960年代以降、米国などから年間50〜100万尾が「ミドリガメ」の名で輸入され、それらの多くが捨てられた結果、今では、大阪のほとんどの池・河川などでも爆発的に繁殖しています。一方、在来種とされるニホンイシガメやクサガメが大幅に減っていることが分りました。野生化したミシシッピアカミミガメに生活の場を奪われた結果です。2005年から「外来生物法」が施行され、アライグマ、ブラックバス、ウシガエルなど一連の外来生物が「特定外来生物」に指定されましたが、ミシシッピアカミミガメは、なぜかリストから外れています。外来生物による被害を防ぐためには、国内の外来生物の駆除は当然ですが、むしろ「生きた外来生物の輸入禁止とペット等不要外来生物の回収の制度化」が緊急課題だと思います。

 他方、ペットに向き合う私達市民も、人間の身勝手でふびんな生き物を作らないために、後から「飼うことに飽きた」「大きくなりすぎて飼えない」ということのないように、事前に「そのペットを飼い続けることができるのか?」と自問してみることが大事なのではないでしょうか。 

 水辺はすべての生き物の生命と文化の源であり、多様な生き物が共生できる水辺環境を整えることこそ緊急の課題です。

(はやし よしまさ)