不思議な食虫植物

 今回は、植物の中でも変わった性質を持っている食虫植物についてお送りします。食虫植物は、葉などで虫や小動物などを捕まえて消化し、栄養分として吸収する植物です。食虫植物がはえている所は、とても養分の少ない土地なので、足りない分をそうすることで得ています。食虫植物も普通の植物と同じように、日光から栄養分を自分で作っているので、虫を食べなくても枯れることはありませんが、育ちが少し悪くなったりします。 食虫植物の虫のとらえ方には、大きくわけて5種類あります。

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まずは、食虫植物で一番見ておもしろい虫のつかまえ方をする「はさみこみ式」は、虫を消化し終って、ふたたび葉が開くまで10日くらいかかります。この種の食虫植物であるハエトリグサでは感覚毛に2回触れたとき、瞬時に補虫葉が閉じて虫を挟み込みます。

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また、タヌキモ、ミミカキグサに代表される「吸い込み式」の食虫植物は、水とミジンコを一緒に吸い込んで吸収します。

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ウツボカズラ、サラセニアなどの「おとしあな式」は、入口やふたの周囲から蜜を出しておびきだします。虫が入ってもふたは閉まりませんし、なんの動きもありませんが…。それでも壺の口のところに虫が止まると、虫は足を滑らせて落下し、中で溜まっている消化液で溺れて消化されます。

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そして、モウセンゴケの仲間に代表される「ねばりつけ式」は、虫がくっつくとゆっくり葉を動かして虫をつつみます。大きな種類になると、数枚の葉で協力し、トンボなどの大きな虫もつかまえます。

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最後に、「さそいこみ式」のゲンリセアは、地下にらせん状の虫を捕まえる部分を持ち、そのすき間からはいつも少しずつ水が吸い込まれています。そのすき間に線虫やプランクトンなどが入りこむと、水の流れで外へは出られず、奥へ入って消化されます。

 これらの食虫植物の育て方は種類によって異なりますが、基本的には植物を植えこむ用土は、どの種類でも水苔か、ピートモス+鹿沼土(細粒)で育てられます。肥料は通常必要ありませんが、モウセンゴケ類や、ムシトリスミレ類などは、ごく少量のマグアンプKを鉢底に入れると効果があります。また、アブラムシがついた場合は、手で取り除くか、薄いオルトラン液剤などを霧吹きでかけます。(ただし薬害には注意!!) 用土が古くなると調子が悪くなるので植え替えますが、なるべく真夏は避けるようにします。冬に休眠する種類なら休眠中に植え替えると良いかと思います。

 こうした食虫植物を天王寺公園では、食虫植物の不思議な世界を広く知っていただけるよう、「食虫植物展」を2011年7月16日(土)から8月28日(日)まで植物温室で開催しています。
 また、期間中の毎週水曜日には食虫植物を中心とした「温室ガイド」も行っておりますので、この機会に食虫植物を、ぜひ御堪能ください。

(古谷 綱康)