西本 奏子さん

 私はISISという国際機関に勤務しています。ISISはトヨタの車と同じように「アイシス」と読みます。ISISは35年間、世界中の動物園、水族館、動物学関係機関が飼育個体の情報を共有する場を提供し、彼らの保全目標の達成を促進してきました。日本人職員は私だけで、他は誰も日本語が分かりません。よく忍者について質問をされます。ISISでは多数の言語が扱われるため、職場内の共通語は英語ですが、私は留学経験もなく、英語が得意というわけでもありません。英語での失敗を数多く経験しているため、間違いを恐れないことだけが唯一のとりえです。
 さまざまな分野における国際化が進む昨今、動物園や水族館も例外ではありません。国内の個体だけでは遺伝的多様性が低くなってしまうため、国際間での動物交換が重要視されている種が少なくありません。日本には絶滅の恐れのある動物を上手に飼育する技術があり、飼育下ではなかなか子どもが生まれない動物の繁殖にも多数成功しています。これは諸外国に誇れるものであると私は認識していますが、言葉の壁が存在することもあり、外への情報発信が簡単にはいかないようです。しかし、言語はあくまでもツールにすぎません。そのせいで素晴らしい中身を知ってもらえないのは非常にもったいないことであり、少しでも日本の動物園水族館に寄与できればという思いで、ISISに勤務しています。これまでにもいくつかの事業に協力をしてきましたが、今後更に協力の幅を広げられたらと思っています。
 私は業務上多くの動物のデータを扱いますが、動物そのものに触れることはありません。そのため、日々動物と接している方々を心から尊敬しています。私のように動物には直接関わらないけれど、動物のために働いている人がいることを少しでも知っていただければうれしいです。

(にしもと かなこ)