動物園ではたらいてみよう!


  動物好きなら誰もが一度は、動物園ではたらいてみたい、と考えたことがあるのではないでしょうか。今回は、そんなみなさんの夢を叶える、天王寺動物園の職業体験プログラムを紹介します。
小学校高学年向けには、飼育係を体験できる、「サマースクール」を開校しています。中高生向けには職業体験学習のために「動物飼育体験講座」を行っています。専門学校生、大学生向けには「飼育実習」、「獣医学実習」、「動物園実習」、「学芸員実習」をご用意しています。また、「インターンシップ」として学生と社会人を受入れています。日数、受入れ可能件数などは表1にまとめました。
それでは各プログラムを詳しく見ていきましょう。

①サマースクール
 サマースクールは小学4~6年生を対象に、夏休みに開催する人気イベントです。往復はがきで申し込みいただき、抽選となりますが、今年は人員削減により開催日数を例年の6日間から4日間に縮小したため、倍率は2倍強と例年より高くなりました。昨年までは、午前に飼育体験を行い、午後には市内の公園で出る木の枝やドングリなどを用いた「リサイクル木工体験」を涼しいレクチャールームで行っていましたが、今年は、教育担当スタッフも削減されたため、午前も午後も通しで飼育実習としました。
 そこで心配したのが、連日35度を越す今年の猛暑です。児童の体調を心配し、予備のお茶も用意して、水筒の水分をこまめに取るようアナウンスしました。準備していたお茶が予想以上に早くなくなり、追加を余儀なくされましたが、動物舎での暑さ対策の甲斐もあり、4日間を通じて体調をくずした児童は1名に留まりました。サマースクールについては、過去のなきごえでも紹介していますので、ご覧下さい。(なきごえインターネット掲載版2007年9月号と2008年9月号のグラフZOO http://nakigoe.jp/nakigoe/
サマースクール
サマースクール

②動物飼育体験講座
 中学生の職業体験カリキュラムに対応したもので、動物園の飼育係としての1日を経験してもらいます。高校生も対象とし、月2回まで12名ずつ受入れています。お申込みは学校単位で受付いたします(個人でのお申込みはお受けしておりません)中高通じて女子の応募が多く、女性の元気のよさをうかがわせる反面、男子中学生はあまり元気がみられず、また男子高校生にいたっては、申込みの例すらもありません。質問の時間でも女子の積極性が目立ちます。男子も恥ずかしがらずに頑張ってください!

③飼育実習
 飼育係を目指す専門学校生、大学生を受入れています。1週間ごとに1つの飼育班を経験します(実習希望動物は選べません)。プロの飼育係を目指すやる気のある学生をお待ちしています。女子の応募も多いです。

④獣医学実習
 獣医学生を対象にしており、現在のところ動物看護学生の受入はありません。学年制限のある園もありますが、当園では1年生からでも楽しく学べます。回数制限もありません。かくいう筆者も当園で2度実習しました。さらには、大学での長期休み中は毎回実習していた猛者もおられます。当園の獣医実習経験者は全国の動物園水族館に就職しています。海外の獣医学生も受入れています(英語が話せることが条件)。

職業体験学習
職業体験学習

⑤動物園実習
 本実習では、飼育作業や解剖こそ行いませんが、動物を観察したり、来園者の教育活動に参加したりして、動物園の運営を総合的に学びます。学部は制限していませんが、動物学を専攻する学生が多いです。また、フランスからの学生も2名、1ヶ月程度受入れました。外国の野生動物を学ぶ大学では、海外での長期研修を義務付けているところもあるそうです。日本の学生より、学ぶ意気込みが強く、積極的に質問したり、レポートも小冊子のようによくまとまっています。
 お互いの母国語ではない英語でやりとりするので、説明がうまく伝わらないこともあるのが玉にきずです。

⑥学芸員実習
 当園では特別企画展として、夏休みに「戦時中の動物園展」、秋に「絶滅の危機にある動物たち」、正月に「干支の動物たち」、春休みに「外来生物の脅威」などを開催しています。この企画展開催に合わせて、学芸員を目指す実習生を受入れています。美術館といった他施設での学芸員実習は3~5日の受入れが多いようですが、当園では2週間みっちり研修していただき、自分でテーマを決めて課題に取り組んでもらいます。学生が選んだ課題の例としては、イラク戦争時のバグダッド動物園の状況解説パネルの作成や、企画展会場を含めたクイズラリー、アイデアの新鮮さに驚いたのは、外来生物のマングースをテーマに人形劇を上演したり、戦時中犠牲になった動物のために来場者に千羽鶴作りを呼びかけた例があります。自分たちでテーマを決めることから、いきいきと課題に取り組んでいます。また、剥製や図書などの資料の整理を通じて、展示の基礎になる資料管理の大切さも学びます。期間中10本弱の小論文と、実習終了後の報告書を作成してもらいますので、かなりボリュームのある実習となっています。

獣医実習でのライオンの人工保育
獣医実習でのライオンの人工保育

⑦インターンシップ
 社会人も参加できるのが、このインターンシップです。事務作業や、教育プログラム補助に従事いただきます。接遇を学びたいという観光コースの短大生を受入れたり、小学校の先生の研修の一環として受入れたことがあります。受入時期は随時ご相談に応じますが、サマースクールや特別企画展などの行事に合わせていただけると目標が定めやすいです。
 これら以外にも、イベントとして「大人のための飼育体験」として大人や親子の半日飼育体験を行ったこともあります。(今後の開催は未定です)
 職業体験プログラム受入れの際には、参加者が怪我などの事故にあわないよう、気を遣います。また、小中高生を受け入れるには、飼育上の困難な部分はあらかじめ作業を終えておくなど、毎回準備が必要です。大学生の実習生には、与えられた状況を見極めて自分がどう動くべきか、考えて行動するよう指導しています。というのも、年々、自分で考えて動く実習生が減ってきているように感じるからです。また、学芸員実習やインターンシップでは、お客様の前に出ることも多いので、接遇研修にも力を入れています。

学芸員実習生が企画したクイズラリー
学芸員実習生が企画したクイズラリー

お問い合わせは天王寺動植物公園事務所 電話06-6771-8401へどうぞ。

(芦田 貴雄)