ゾウの春子に目薬をさしたゾウ!


  天王寺動物園では、春子ラニー博子という2頭の雌のアジアゾウを飼育しています。2頭のゾウは仲が悪く、闘争を繰り返していることは、これまで何度か“なきごえ”でご紹介しました。これが原因で、我々、飼育係が四苦八苦しているのですが・・・。

アジアゾウの春子
アジアゾウの春子

 昨年の12月3日、朝、ゾウ舎へ行くと、春子の右目から大量の涙が出ていました。春子の右目は白内障のため、全く見えていません。白内障の症状が進行したのか、あるいは何かに細菌に感染したのか心配しました。その後も、症状は改善せず、12月8日からは、涙がドロドロとした粘液状になり始め、目は閉じたままになり、症状は悪化しているように思われました。春子の目の状態がわからないので、片栗粉を水で溶いたような状態になった涙をこまめに取り除きながら、様子を見ることにしました。
 春子の右目をよく観察してみると、白濁した眼球の一部が真っ白になっており、角膜の一部が剥離していることが確認できました。(エーッ、角膜炎を起こしてるやん。)ラニー博子との闘争で激しく右目を強打したのでしょう。(ほんま!!しょうむないことケンカするから、こんなことになるんやで!)

角膜炎を起こした右目

角膜炎を起こした右目



角膜炎を起こしていない時の右目
角膜炎を起こしていない時の右目

 獣医師と相談し、目薬を注すことにしましたが、以前、白内障の治療で目薬をさしたことがあり、何度か試みたものの、かなり暴れて嫌がった経験があり、躊躇していたのですが・・・。まあ!結果はどうあれ、一度試してみようということで、12月24日から抗生物質が入った目薬の点眼を始めました。
 我々は点眼を始めるに当たって次のことを決めました。

  1. 決してむりをせず、ゾウのペースに合わせ、点眼できればいいし、できなければそれで良しとし、気楽な気持ちで行うこと。
  2. 冷たい薬を点眼すると、刺激があり嫌がるので体温と同じくらいのお湯に薬を溶き注射器で点眼すること。

 では、やってみよう!!春子をなだめながら、右目側につくと、春子は嫌がり耳を立て、鼻を丸めて、頭を下げました(これは攻撃姿勢)。脳天気な我々は攻撃姿勢に関わらず、「オッ!チャンス」頭を下げたおかげで、春子の右目が私の手元に、目じりより注射器でピューッと、バッチリ大成功!何が何かわからない春子、納得いかないけれど、すごく誉められ、リンゴをもらい、ちょっと気分も良い様子でした。
 こうやって、無理をせず、ゾウのペースに合わせ、気楽に考え、お馬鹿な私達は、怪我もせず、全く調教のできていない春子の治療を1月14日に終えることができました。
 ちなみに、2頭の闘争は今も続いています。(勘弁してくれー!!)
※調教ができているゾウは、横にねかせるか、座らせて保定し、点眼を行うことができます。春子はできてないゾー!!)

(小谷 信浩)